安室透の性格を考察。スコッチや宮野エレーナとの関係性から読み解く“主人公の才覚”【名探偵コナン考察】

トリプルフェイスを持つ男、安室透。

私立探偵「安室透」であり、黒の組織の「バーボン」であり、公安警察「降谷零」でもある。

複数の“仮面”を使い分ける彼の本質はどこにあるのか?

 

そんな特集「トリプルフェイスの素顔」第2回では、安室透の性格と人物像をプロファイリング

さまざまな一面のある安室ですが、どれが本当の彼なのか。そのパーソナリティを理解することで、今後の行動も予測できるようになるはず。

スコッチや宮野エレーナとの関係性を考察しながら、安室の持つ7つの顔をあぶり出していきます。

 




1. 友情に厚い

安室「殺したい程憎んでいる男が…左利きなだけですから…」
(名探偵コナン90巻より引用)

安室の1つ目の素顔は、友情への厚さ。ご存知の通り、安室はスコッチを自殺させた赤井へと憎悪を抱いています(勘違いですが)。

しかも、「殺したいほど憎んでいる」という発言も本心。安室はボスに許可を取り、組織公認で赤井の死を探っているほか、緋色編の前にも赤井の生存についてベルモットに話し、その推理を証明すると宣言しています。

つまり、安室は赤井を捕えたら組織へと引き渡そうと思っている。後になってFBIとの軋轢を生みかねないにも関わらず、赤井の身の安全には興味なしといったところ。

 

逆に言えば、安室はそれほどスコッチのことを大切に思っていたのでしょう。

スコッチは安室を幼少期のあだ名「ゼロ」と呼んでおり、おそらく幼馴染。クールに見える安室ですが、友情に厚い昔気質の人物だとわかります。

 

安室「静かに瞑れ…友よ…」
(名探偵コナン77巻より引用)

警察学校の同期だった伊達の墓参りにも訪れています。伊達のトレードマークだった爪楊枝を置いているのも、身近な友人ならではの気遣い。

伊達からも安室を心配するメールが届いていますし、会わなくなっても簡単に忘れてしまうような仲ではなかったのでしょうね。

 

▼安室と警察学校組の人物相関図はコチラ

 

2. 初恋の人を今も想っている

エレーナ「ダメって言ったでしょ?もうケンカしちゃ…」安室「だってー…」エレーナ「次に怪我して来てももう手当てできないよ…先生…遠くに行っちゃうから…」
(名探偵コナン84巻より引用)

蘭の「ダメだって言ったでしょ?」というコナンへの言動を見て、エレーナを回想するシーン。

安室の容姿から察するに、おそらく4〜7歳の頃の出来事。現在29歳なので、じつに22〜25年前もの記憶です。普通なら忘れてしまうほど昔なのに覚えているのは、重要な記憶だから。現に、このとき安室は上の空になっています。

 

安室にとってエレーナとはどんな人物なのでしょうか。冷静さを失っているということは、少なくとも強い関心を抱いているのは確か。

作者は「青山先生と話そうDAY2017」のなかで、安室の初恋の相手はエレーナだったことを認めています。そして、このシーンの表情からして、安室はエレーナを「今は嫌っている」とか「今は恨んでいる」みたいなこともなさそう。

憎悪や悪意を向けていない相手に強い関心を抱くとしたら、それは好意的な感情。つまり、それが恋愛感情かはさておき、安室はエレーナのことを今も大切に想っている。

 

詳しくは次回以降の記事で話しますが、安室が公安に入った理由もエレーナの手がかりを探すためだったのではないでしょうか。

 

3. 自信家

伊達「自分の力を過信してどっかでおっ死んじまってるかもな…」
(名探偵コナン77巻より引用)

伊達は安室を「自分の力を過信する人物」と考えています。

これは確かにその通り。たとえば、赤井を執拗につけ狙うのも、彼の力がなくとも組織を倒せると過信している証です。

冷静に優先順位をつけるなら、まずは組織を倒し、その後赤井との決着をつければいい。赤井ほどの戦力を退場させてしまうのは、組織にとっても好都合ですからね。

 

安室「タネがわかればそれを調べる事なんて僕にとっては…1日あればお釣りが来ますよ…」
(名探偵コナン85巻より引用)

これもなかなかの自信家発言。とはいえ、結果的に有言実行しているシーンのため、一概に「力を過信している」と言えないのも確か。

 

安室「アイツに自分の拳銃を渡し…そうさせたのは赤井秀一…あれ程の男なら自決させない道をいくらでも選択出来ただろうに…」
(名探偵コナン90巻より引用)

逆に、これは自信家ゆえの推理ミスとも言えるかも。

安室はスコッチが自殺したことを見抜き、使った拳銃が赤井のものだったことから「赤井がスコッチに拳銃を渡した」と考えています。スコッチの自殺を見抜けたのは、安室ならではの観察眼があったからこそ。しかし、それゆえに自分の推理に固執し、真実を見誤ってしまったのかもしれません。

赤井の視点に立てばわかりますが、FBIという立場で、公安と疑われているスコッチを殺すのはリスキー。自分の所属がもし公安にバレてしまったとき、両組織に確執を生むだけですからね。

 

4. 探究心と好奇心

安室「まぁ、子供の好奇心と…探偵の探究心は…相通ずるものですから…」
(名探偵コナン76巻より引用)

安室は自分を探偵と認識しているため、ここでの「探偵」は自分をもとに考えている。つまり、安室は強い探究心の持ち主だとわかります。

また、おそらく「子供の好奇心」とは、純粋に「知らないことを知りたい」「わからないことを理解したい」といった部類のもの。安室の感じている「探偵の探究心」もこの感覚に近いのでしょう。

赤井もさざ波編で「謎を解き明かす快感は味わった」と話していますが、これも同じような心境かと。探偵の才能は「わからないことを理解できたときにどれくらい喜べるか」なのかもしれませんね。

 

5. 愛国心

安室「満喫したのなら…とっとと出て行ってくれませんかねぇ…僕の日本から…」
(名探偵コナン84巻より引用)

「僕の日本」という言葉から強い愛国心が垣間見えます。また、「日本を守る」という公安警察の職務へのプライドもあるのでしょう。

ここからわかるのは、安室のルーツは日本にあること

作者は安室の肌の色について「ハーフなのかもしれないね」と話していますが、あくまでも故郷と捉えているのは日本のようです。となると、幼少期に宮野エレーナと交流していたのも日本国内の話か。

 

ちなみにこのシーン、なかなかハードな物言いですが、そこには赤井への憎悪も含まれていると思います。

いくら愛国心が強くても、ここまでジョディやキャメルを不快にさせる必要はないはず。FBIを挑発する作戦上の言動かとも思いましたが、ベルモットは安室とFBIのやりとりを疑問に思っていたようなので、それも違う。

考えられるのは、赤井への憎悪。いわゆる「嫌いな人の友人を好きになれない」というロジックでしょう。自分の親友の命を奪った人物を慕っている同僚となれば、攻撃的になってしまうのも当然かもしれません。

 

6. おしゃべり

青山先生「安室は、しゃべりまくってても嫌がらない人…かなぁ」
(名探偵コナンSDB80+より引用)

安室の好みのタイプについて、青山先生はこうコメント。

安室はよく話術を駆使して敵を罠にかけています。こうしたテクニックは、そもそも話好きだからこそ身についたのかも。

しかし、安室はおしゃべりな人にありがちな「自分の話ばかりするタイプ」ではありません。蘭や園子に対しても聞き手に徹し、柔軟に返答しているので、意思疎通という意味でのコミュニケーション能力も優れています

 

7. 目的のためなら手段を選ばない

コナン「どういう方法をとったにせよ、屋外で事故に遭わせる計画だったと思うよ!」
(名探偵コナン85巻より引用)

安室はFBIから楠田陸道の情報を引き出すために、一般人の澁谷夏子を事故に遭わせる計画を立てていました。

もちろん、大怪我にならない程度に加減するつもりだったとは思いますが、それでも危害を加えようとしていたのは確か。普段は明るい安室ですが、目的のためなら手段を選ばない非情さも持ち合わせているとわかります。

こうしたグレーなやり方は、フィクションにおける公安の専売特許でもありますからね。

 

とはいえ、楠田の情報は組織を倒すためではなく、赤井を探すためのもの。これでは完全に私情目的。

赤井を見つけ出すのは公安の総意でもあるようなので、もしかしたら最終的には赤井と組むつもりなのかもしれませんね。可能性は低いですけど。

 

考察の結論

特集「トリプルフェイスの素顔」第2回はここまで。

笑顔の裏に非情さを潜ませる安室ですが、根底にあるのは友人や初恋の人への想いである様子。他人を原動力に行動する姿からは、“主人公の才覚”を感じます。アムロレイをベースにキャラクター設計している影響でしょうか。

ということで、考察の結論は以下の通り。

3 Lines Summary

  1. 安室透は友情に厚い
  2. 安室透は初恋の人を今でも想っている
  3. 目的のためなら手段を問わない「公安の非情さ」の持ち主
Twitterでもショートな考察を更新中。








2 件のコメント

  • 初コメント失礼します。他の記事も読ませて頂きましたが、論理的に考察されていて、私もだいたい似たような推理になるかなと思っていますが、この記事において誤解しているかなと思える箇所がありました。それは、「大怪我にならない程度に加減するつもりだった」「フィクションにおける公安の専売特許」という2つのキーワードでわかります。

    例に取り上げられている澁谷夏子先生を怪我させようとしたシリーズですが、バーボンこと安室透が澁谷先生が杯土中央病院に運び込まれることを前提にしていた計画を立てていたことは、他に手段がないことから疑いようもなく、読者に推理させている部分でもあり今さら覆ることはないと思いますが、この理由として、管理人さんはグレーなやり方をする公安としての行動。だから加減するつもりだったと解釈していると思います。

    しかし、あの計画は大怪我でないと成り立ちません。軽症では自力で帰宅してしまいますし、自分で近所の病院に行ってしまいます。杯土中央病院は大きな総合病院のようですが、そこへ意識不明の渋滞で運び込まれなければなりません。澁谷先生が事故に遭ったことを病院から学校に電話したら、現場に落ちていた携帯電話の通話履歴からキャメルが呼び出されて・・・という一連の流れになりません。安室さんはジョディ捜査官の携帯の電池が切れて、キャメル捜査官に電話を借りて澁谷先生に電話をすることで通話履歴が残る。この段階からもう計画の内に入れていました。

    結果的に、澁谷先生が意識を取り戻してからすぐに学校へ連絡しませんでしたが、その理由は犯人が児童の親で、自分に責任があることを感じてバツが悪かったからであり、安室さんが何らかの方法で怪我をさせた場合はこれに当てはまりません。コナン君は「車でひいて大怪我させるつもりだったかも」と、ちゃんと「大怪我」と言っています。安室さんは人を操るのが得意なことから、自分の車で轢いて大怪我させることはしなかったかもしれませんが、加減というのはあくまで殺さない程度という加減であって、軽い怪我ということはないはずです。

    理由は後述しますが、安室さんがここまでしたのは公安だからグレーなのではなくて、赤井秀一を捕まえたい思いからの暴走です。この前章は次の緋色シリーズで赤井さんを捕まえて組織に引き渡そうとしたことに繋がりますが、公安のスパイとして潜入中のバーボンが、わざわざ死んだことになっている赤井さんを生きていると蒸し返し、捕まえて強制送還させようとしたなんてことではなくて、その執着心から本当に引き渡そうとしたはずです。そして、その理由がガールズバンドで「殺したいほど憎んでいる」からとわかり、さらに詳細な理由が、裏切りシリーズで「赤井がスコッチの自殺を止めずに利用した」(自分の手を汚さずに殺人と同義のことをして出世した)と誤解していることにも繋がります。

    組織に赤井さんを引き渡せば、殺害されます。これで、赤井さんがしたように、安室さんは自分の手を汚さずに、スコッチの仇が取れるわけです。安室さんはトリプルフェイスと呼ばれるように、組織としてのバーボン、公安としての降谷零、ポアロの安室透と使い分けていますが、組織の仕事を忠実にこなすことで組織内の地位を上げることが、公安のスパイとしての仕事をこなすことになり、赤井さん捜索の足場を固めるために安室透として毛利小五郎、蘭ちゃんやコナン君との信頼関係を築いていきます。

    安室さんはこの3つのどれにも関係しない個人的な私情のみで動くことはなく、赤井さんの捜索は組織のための行動であり、赤井さんを引き渡しその功績からボスと直接取り引きできるまで出世することが、公安としての仕事をこなすことにもなります。だから私情が入っていることを悟られることはない、でも実は・・・というのが話のオチです。私情が入っていることは管理人さんも書いていましたが、一件任務に忠実なように思えて、根深いところに私情が入っている。後者のほうが安室さんの行動に大きく影響を与えていると考えられます。

    公安はフィクションにおいてはグレーなやり方をするというのは確かですが、CIAも同じで、そのことはキール編で作中にも説明がありました。しかし、水無玲奈は善良な人間として描かれ、ブラックインパクトでは飛び出してきた子供を避けて転倒し、FBIに捕まってしまうという失敗をしています。他にも、ニュースの中継中に献血に行ってしまったりといったエピソードが描かれていますね。

    所属の特性ではなくて、あくまで個の人間性で描かれている。それも当然で、現実の世界でも潜入捜査官は自分の判断で作戦を実行し、個々でその責任を負います。公安が上の命令で犯罪行為を認めることはできないからです。赤井さんを捕まえる作戦を公安のチームで行ったことが一層紛らわしく見せているのですが、どのような手段で赤井さんの生存を確認するかは安室さん自身の判断で行われます。安室さんが典型的な公安の特徴を持ったキャラクターであると解釈するよりは、エレーナ、スコッチ、松田刑事、スコッチへの友情や愛情を見ても、何かが今の彼を変えてしまったのではないかと考えるほうが自然です。もちろん、それはスコッチの死です。

    3つの顔を持つキャラというより、トリプルフェイスの裏に隠された素顔という視点で見たほうが、より正確に安室さんの行動理論が見えると思います。そして、スコッチの死。赤井さんは大好きだったスコッチウイスキーを飲まなくなり、ジェイムズ・ブラックが言っていたように、明美さんが死ぬ前から心を開いていたわけではないというその理由にスコッチも関係しているのだとすれば、親友だった安室さんが受けたショックは赤井さんの何十倍も大きいはずです。

    それならばスコッチの死が今の安室さんの価値観や行動に影響を与えたのは確実で、その視点で安室さんの行動を細かく見ていくと、実はちゃんと伏線が散りばめられていることに気づくと思います。水戸黄門のように悪を裁くコナンくんに、ちょっとグレーなことをする公安の味方ができましたというのではなく、現在は進行上の都合で曖昧になっていますが、コナン君も気づかない、というか本音を隠し心に闇を抱えている安室さんが、赤井さんと和解して自分の行動を改め、そこで初めてコナン君の心強い仲間になるというストーリーになるのではと思います。

    • 鋭いご指摘ありがとうございます!

      おお、なるほど…。確かにグレーなやり方を厭わないのは、公安の属性というより安室個人の暴走ですね。
      緋色編が公安ぐるみで描かれていたことから公安の属性と解釈していましたが、これも安室と同様の暴走状態が他の捜査官にも起こっているからということですね。同僚を殺された恨みで。
      そう考えると、安室がリーダーとして振舞っていることや、上への報告を請け負おうとしてることも、組織の総意ではなく個人の暴走に動機があるからだと合点がいきます。
      ベルモッチさんの言うように、この記事は「安室個人がスコッチの死とともに変わった」という結論までたどり着けたらグッドでしたね!

      一方で、作者側が安室にグレーな行動をさせられるのは公安だから、という裏事情はありますよね。
      高木ら日本警察は絶対正義として描かれていて、そこから逸脱した坂田ハンなんかは日本警察に裁かれてますし(笑)。
      「組織の属性と個人の属性の見分け」という視点は忘れないようにしたいです。

      怪我については、「意識不明(本人に重軽傷の判断がつかない)+入院が必要」というのが条件なので、大怪我ではなく強めの脳震盪なんかでも十分なんじゃないかなーとは思います。
      救急科があるのはそれなりの大病院だけなので、搬送先は事故を起こすエリアから絞れますし、精密検査が必要となれば入院させることも可能ですからね。
      というのも、作者の中で安室は「暴走して無関係の他人まで傷つける人物」という位置づけではないと思うんですよ。なぜなら、コナンがそういう手段を許さない絶対正義として描かれているので。そこまでしたら安室は本質的に「コナンの敵」になってしまい、二人を結託させられません。
      コナンの「大怪我させようとしたのかも」というセリフも、「コナンは安室を無関係者に大怪我させかねない悪人だと考えた」のが重要なのではなく、「コナンが安室を悪人だと確定させてない」のが重要なのかなと。
      そのため、仮に安室が澁谷先生を傷つけるような物語展開になったとしても、安室は手加減するんじゃないですかね。「頭の打ちどころが悪くて意識不明」とか、ご都合主義的な怪我を意図的に与えました、ってオチにしてくるとは思います。

      私自身、まだまだ考察が甘かったり、結論の出てない状態で見切り発車的に記事アップしちゃったりもするので、考察を深めてくれる鋭いご指摘はめちゃくちゃ嬉しいです!またぜひお願いします〜!

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    ABOUTこの記事をかいた人

    子供の頃にベルモットの変装トリックに騙されて以来、生粋のコナンファン。考察は「DEATH NOTE」などにも似た頭脳エンタメだと思います。読み物として面白くなるように「わかりやすさ」と「サプライズ」を大切にしています。本業も物書き。