烏丸蓮耶との関係
次に考察するのは、組織のボス・烏丸蓮耶との関係について。どうやら安室は、潜入捜査官の誰よりも烏丸に近づいている人物のようです。
安室は「あの方=烏丸」だと知っている
優作と赤井は「CARASUMA」のアナグラムを解き明かし、「あの方=烏丸」へとたどり着きました。しかし、この事実は安室もすでに知っていたと思われます。
なぜなら、バーボンは波土を偵察させられているから。
波土を偵察する狙いは、羽田浩司のアナグラムになぞらって曲名をつけたかを暴くこと。アナグラムの意味を知らない人物に任せても仕方ないため、バーボンは「CARASUMA」を知っているはず。
安室「組織のメンバーが知ったら驚くでしょうね…まさかあなたがボスの…」
(名探偵コナン85巻より引用)
また、バーボンは烏丸とベルモットの関係性も見抜いています。これも、あの方の正体を知っているから見抜けたなら納得。
それでも烏丸を一網打尽にできないのは、死んだはずの人物だから。
生きていることを立証できないため、法的に拘束する権利がないのでしょう。つまり、現在の烏丸の実態は安室もつかめていない。逆に言うと、烏丸とベルモットの関係性は、烏丸の実態を知らなくても推理できると言えそうです。
烏丸からの信頼を獲得
それにしても、烏丸のバーボンに対する信頼度はなかなか。
火傷赤井への変装を許可したり、波止の事件を偵察させたりと、重要なミッションを次々と任せています。秘密主義者というある種の“特権階級”も認めていますしね。
これについては、赤井を憎悪しているおかげかも。普通に考えたら、敵対組織であるFBIを憎むバーボンは、黒の組織サイドの人間。人の本音を見抜けるベルモットにスパイだと気づかれないのも、その憎悪が本物だから。
もちろん、バーボンの能力を高く評価しているのも確かでしょう。
烏丸は自分の正体や目的を内部にも秘匿し、ごく限られたメンバーしか信用していません。つまり、組織は「人物重視」ではなく「実力主義」。バーボンに重要な任務が集まるのは、実力を認められているからこそ。
これほどの信頼を勝ち取ったのは、歴代の潜入捜査官でも安室だけですね。
ラムとの関係
最後に考察するのは、組織のNo.2であるラムとの関係について。
安室「了…解…」
(名探偵コナン1008話より引用)
ラムから工藤新一の情報提供を依頼され、焦りながらも応じるシーン。安室とラムの唯一の絡みなので、ここから両者の関係を考えてみます。
安室はどうして焦ったのか?
このシーン、安室はどうして焦ったのでしょうか。作中では、安室と新一の接点を示すシーンはゼロ。一見すると、焦る理由はなさそうです。
結論から言うと、安室はコナンと対立するのを危惧したのだと思います。
まず、新一の情報を求められて焦るのは、それが不都合なことだから。
つまり、安室は新一本人、またはその周辺について情報を持っています。情報がないなら都合の良し悪しも生まれないため、淡々と任務を請け負ったはず。
「求められた情報がないから焦った」という可能性もゼロではないですが、安室の自信家な性格上、そんな理由では焦らなさそう。また、物語としても意味のない描写になってしまいます。
「コナン=新一」には気づいていない
では、どんな情報を持っているのか。
「コナン=新一」を見抜いている可能性は低いです。なぜなら、安室は「灰原=宮野志保」に気づいていないから。
もし「コナン=新一」を見抜いたなら、幼児化の存在も知ったことになるため、コナンと一緒にいる大人びた少女を宮野志保だと気づいてしまいます。
「灰原=宮野志保」がバレていないうちは、安室は幼児化を知らないと考えていいはず。
ラムに情報を提供すると、4人の人物を危険にさらす
「コナン=新一」にたどり着いていないとすると、安室の持つ情報とはなんなのか。ヒントはこのシーンにありました。
安室「あの少年とこの家の家主の工藤優作が…どういう関係かはまだわかっていませんが…あなたがあの少年のお陰でここに住まわせてもらっているのは確かのようだ…」
(名探偵コナン85巻より引用)
安室はコナンと優作の関係性を調査済みです。
両者にはかなり年の差があるため、家系図や戸籍情報も調査したはず。当然、優作の息子が新一であることや、新一が半年前まで工藤邸に暮らしていたことも知っているでしょう。
そして、その工藤邸には現在、沖矢昴がコナンの口利きによって居候しています。つまり、コナンと新一に接点があるのは明らか。
しかも、安室から見れば、コナンは少なくとも新一の生死を把握している。でなければ、他人である沖矢を「住まわせる/住まわせない」のジャッジはできませんからね。
そう考えると、安室の焦りは十分に理解できます。
なぜなら、ラムに新一の情報を提供した場合、4人の人物を危険にさらすことになるから。4人とは、新一、優作、沖矢、そしてコナンです。
4人中、誰よりも危険にさらしたくないのはコナン
このうち、最初の3人は安室にとって(極端な言い方をすれば)どうなっても構わない相手。
新一や優作とは面識がありませんし、沖矢についても波止の事件で「タートルネックをめくりたい衝動に駆られる」と話しています。つまり、その正体を赤井だと見抜いている可能性は高い。
安室「殺したい程憎んでいる男が…左利きなだけですから…」
(名探偵コナン89巻より引用)
安室は緋色編で「赤井と沖矢が同時刻に存在する」という状況を経験。なのに波止の事件時に沖矢へと疑惑をかけるのは、緋色編での変装トリックを見破ったからこそ。
安室はもともと「沖矢=赤井の変装」と考えており、コナン側に変装の名手がいることは想定しているため、沖矢の利き手が変わった理由も瞬時に推理できたのでしょう。
そして、「沖矢=赤井」を見抜いているとすると、安室にとって危険にさらしたくない人物はコナンのみ。
安室の知るコナンは、組織と対抗する人物であり、赤井の裏で糸を引くほどの実力者。そんな相手と対立するとなれば、安室は完全な組織の人間として振る舞うことになりますし、本来なら排除したくない対象なので、焦るのは当然。
つまり、このシーンで安室はコナンと対立するのを危惧した、と言えますね。
ラムの実力を安室は恐れている
さて、長い前座になりましたが、ここからわかるのは安室がラムを恐れていること。
ラムが与しやすい相手なら、安室もここまで焦りません。むしろコナンと共同戦線を張り、ラムを罠にかけるチャンスと考えるはず。
赤井「お前1人逃がすぐらい造作もないのだから…」
(名探偵コナン90巻より引用)
赤井はスコッチを組織から逃がすのを造作もないことと考えています。だからこそ、スコッチが公安であるとわかっても全く焦りを見せていません。
同じことは今回の件にも言えて、コナンをラムから疑われないように工作するのが簡単なら、安室も焦らないはず。「了…解…」と渋々承諾したのも、従わなければ自分の身が危うくなると考えたからか。
いずれにせよ、安室はラムの実力を知り、高く評価している。
あの方からの信頼を得ている安室なので、過去にラムと仕事をしたこともあるのかも。今回のケースと同様、安室が組織の敵対者の情報を提供し、ラムがその人物を葬ったとか。だとすると、安室が恐れたのはラムの実力だけでなく、冷酷さや残虐性の可能性もありますね。
今後の安室の行動としては、新一の情報を素直にラムへと流すのか、それともコナンと結託して罠にかけるのか。
普通に考えたら後者ですが、もしそれを選択できないとしたら、安室はラムから疑いの目をかけられている可能性も。よほど迂闊な動きをできない状況ということですからね。
考察の結論
ということで「トリプルフェイスの素顔」第3回はここまで。
宮野一家やジンとの関係を洗い切れていませんが、だいぶ長くなってしまったので…(笑)。そちらはまた別の記事にて。
3 Lines Summary
- 安室とベルモットには多くの類似点があり、それが“共犯関係”を成立させている
- 安室は「あの方=烏丸」に気づいているが、死んだはずのため手出しできない
- 安室はラムの実力を知り、高く評価している
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初めまして。
水無怜奈が「組織の新しいメンバーが動き出した!」と言ってるシーンがありましたが、スコッチが殺された時には安室さんってコードネームもらっていましたよね?(赤井さんがそう呼んでるシーンはなかったですけど、ミステリートレインよりも前から安室=バーボンって気づいていたから)
楠田陸道の回でベルモットは成果をあげた人にしかコードネームをつけないみたいなことを言っていましたしたし、水無怜奈も別に新米っていうわけでもないのでバーボンの存在を知っていると思うのですが。。。
Hiroさんは水無怜奈の発言をどうとらえてますか?
初めまして!コメントありがとうございます。
このセリフですが、確かに額面通りに受け取るとキールが「バーボン=新メンバー」と認識してるように聞こえますが、単に「バーボンというメンバーが新たに動き出した」って意味で使っただけかな〜と思います。
ご指摘の通り、組織でコードネームを得るにはある程度の手柄を立てないとダメっぽいので、コードネーム持ちの時点で新メンバーということはあり得ません。その仕組みはキールも知ってるはずなので、キールが誤解してたと考えるよりは、言葉のあや的な感じで受け取った方が良さそうです。