謎の板前・脇田兼則。
若狭留美・黒田兵衛を含む3人の中では、“ラムの筆頭候補”とも呼ぶべき人物です。事実、脇田の正体に関しては、“ラム濃厚”であることを以前の考察でもお伝えしました。
しかし、別角度から考えれば、脇田には別の正体があるとも推理できます。それが、「脇田はラムの影武者である」という説です。
脇田はラムの“影武者”ないし“協力者”の可能性も
脇田考察については、以前こちらの記事にて書かせていただきました。
察しの良い方ならお気づきだと思いますが、この記事では執拗に「候補者3人の中にラムがいるなら脇田」という言い回しをしています。
つまり、候補者3人の中にラムがいないパターンもあり得るということです。
上記の考察を経て、脇田について確定したのは「組織のメンバーであること」「小五郎と新一を調査していること」の2点。これは、ラムである条件の一部ではありますが、ラムである証拠にはなりません。
あくまでも他の候補者がこの条件にヒットしないから、消去法でラムの可能性が高いだけです。
今回、青山先生の仕掛けてきた“ラム当てゲーム”が、もし「若狭、黒田、脇田の中からラムを当ててね」というルールではなかったら?
当然、脇田には別の正体が用意されていることになります。そして、それはおそらく「ラムの影武者」という立場だと思っています。
根拠1. 影武者の存在は当初から匂わされていた
灰原「屈強な大男だとか…女のような男とか…年老いた老人とか…それらが全部影武者だって言ってた人もいたわ…」
(名探偵コナン86巻より引用)
そもそもラムは、当初から影武者の存在をほのめかされていたキャラクター。
今のところ、「女のような男」「年老いた老人」「屈強な大男」という特徴は、1人の人物を表していると考えられています。「長髪」「杖をついている」「大男」である大和刑事のようなパターンですね。
しかし、純粋に3人の影武者がいると考えれば、辻褄はすんなり合います。
おまけに、この3つの特徴は、「脇田=ラム」を否定する根拠にもなる。
なぜなら脇田は、女のような男とは程遠く、屈強な大男にも見えません。老人と言えなくはないですが、髪も黒いしさすがに強引。
「料理上手」「初老」「昔は屈強だった」と無理やり説明することはできるものの、それでは伏線を張る意味がない。伏線は、回収されたときに納得できるからこそ痛快さも生まれます。
たとえば、新出先生がベルモットに入れ替わった前後で、メガネのツルが変わっている件は代表的。伏線の回収後、ひと目で「そういうことだったのか!」と納得できますよね。
こう考えると、「脇田=ラム」だと全ての謎を説明しきれない。
もちろん、今後の描写によって辻褄を合わせてくる可能性はありますが、現時点では「脇田=ラムの影武者」のほうがストンと腹落ちするのも事実です。
根拠2. 脇田は変装を施していない
この3つの特徴は、いずれも見た目の印象。ならば、脇田がベルモットの手を借りて変装しており、本来は別の見た目だとすれば「脇田=ラム」でも成り立ちます。
しかし、その可能性は限りなく低いでしょう。なぜなら、脇田は眼帯をしているから。
もし脇田がラムの変装なら、眼帯をつける必要はありません。ベルモットの変装術は、完全なる別人へと仕立て上げるものですからね。目にどんな傷跡があっても、隠蔽は容易でしょう。
例外として、眼球そのものを失っている状態だと、ベルモットの変装術でも隠し切れないとは思います。
ですが、上記の考察にも書いた通り、コナン世界における義眼は「本物の眼球そっくりの器具」。眼球を失ったときに義眼を使わない理由はないため、少なくともラムの目は(たとえ義眼だとしても)存在するはずです。
となると、あり得るパターンは、
- 変装していない
- 変装した上で、あえて眼帯をつけている
①なら脇田の見た目と3つの特徴は食い違うことになりますし、②なら傷跡を隠した上で(あるいは最初から隠したいものなんてないのに)わざわざ眼帯をつけているので、ラムの振りをしているとしか思えません。
根拠3. 「Time is money」は、読者ではなく安室に向けたアナグラム
ラム「工藤新一の情報を要求する…Time is money!急げよバーボン」
(名探偵コナン1008話より引用)
安室に届くラムからのメールには、毎回「Time is money」の一文が入っています。
「Time is money」を和訳すると「時は金なり」。これをローマ字に変換し、並び替えると「WAKITA KANENORI」。このアナグラムは、「ラム=脇田」を示す作者の演出であると考えられています。
しかし、これが単なる作者の演出ではなく、安室とラムの間で取り決めたサインだとしたら?
たとえば、「今回の送信者はラム本人ではなく、Time is money=影武者の脇田兼則だよ」と安室に伝えるサインだったなら、いかがでしょうか。
「Time is money」は読者に向けたアナグラムではなく、安室に向けたアナグラムだった可能性が浮上します。
仮説はこうです。
ラムには複数の影武者がいて、その1人こそが脇田。彼らはラム自身に捜査の手が及ばないように、普段からラムの振りをして行動している。組織の下っ端などは、本当に彼らをラムだと思い込んでいる。
しかし、安室のような一部の幹部になると別で、影武者の存在を知っている。なぜなら、優秀な幹部に対しては、ラム直々に指示を送りたい場面も出てくるから。つまり、ラムからの指示は影武者を介して送られる。
影武者は複数いるので、単にメールの差出人を「RUM」にするだけでは、誰からの連絡かわからない。そこでラムが考えたのは、メールの文中に差出人を暗示するサインを入れる方法。これにより、誰からの連絡なのかを受信者に伝えることができる。それこそが「Time is money」だった。
安室に送られた「工藤新一の情報求む」のメッセージも、脇田を介して伝えたラムの意思。これなら辻褄は合うのではないでしょうか。
根拠4. 「Time is money」はラムではなく脇田を示すアナグラム
また、そもそも混同しがちですが、「Time is money」はラムを示すアナグラムではなく、脇田を示すアナグラム。
もし「脇田=ラム」だった場合、ラムは自分の名前を文中に入れていることになります。しかし、末尾で「ラム」と名乗っている以上、そんなことをする理由は皆無。
自分の口癖である「Time is money」を偽名として使っている可能性はありますが、だとしたら安室へのメールに毎回「Time is money」を含めるのは危険。メールが外部に漏れた場合、誰かが「Time is money」をアナグラムだと気づき、脇田兼則にたどり着くかもしれません。まさに私たち読者のように(笑)。
根拠5. ラム初登場回に出てきた「インチキ」というセリフ
根拠と呼ぶには頼りないですが、もうひとつ。ラムの初登場回における赤井とジョディのやり取りは、ラム編を暗示しているようにも見えます。
ジョディ「インチキ?」赤井「トリックなんてタネを明かせば大体そうなるよ…」
(名探偵コナン85巻より引用)
これが「ラム編ではインチキを仕掛けるよ」という青山先生からのアナウンスだとしたら、「ラム候補者は3人の中にいると見せかけて、全員ミスリード」である可能性は十分にあります。
また、このシーンでインチキと言われている阿笠博士のトリックも、「4つの紅茶のうち1つが当たりと言っておいて、実は全てハズレ」というもの。
コナン「オメーらの所へ持って行く前に4つの紅茶全部にお酢を入れてたんだよ!」
(名探偵コナン85巻より引用)
ラム候補者の頭数に領域外の妹も含めれば、脇田、若狭、黒田と合わせてちょうど4人。数字もドンピシャで一致します。
「領域外の妹を含めるのは強引では?」と思った人もいるかもしれません。しかし、作中では領域外もラム候補者として描かれています。たとえばこのシーン。
沖矢「その世良さんの周りに変わった人とか見かけませんでしたか?」蘭・園子「変わった人?」沖矢「そう、例えば…絶えず周囲を警戒識見な相手なら瞬時に制圧する能力に長けた…『浅香』という名の…」
(名探偵コナン90巻より引用)
赤井は世良と浅香の繋がりを疑っています。「絶えず周囲を警戒し、危険な相手なら瞬時に制圧する人物」は領域外の特徴と一致するので、これは「浅香=領域外の妹」と思わせるためのミスリード。
そして、当時は「浅香=ラム」とされていたことを踏まえると、この描写は「ラム=領域外の妹」に見せかけている。つまり、読者の認識では「ラム候補者は3人」ですが、作者の認識では「ラム候補者は4人」なのだと思われます。
浅香は誰なのか、なぜ赤井と繋がっているのか気になる人は、以下の記事をどうぞ。
脇田がラムじゃなかった場合、本物のラムは誰?
さて、脇田がラムの影武者だった場合、残るのは「本物のラムは誰なのか?」という疑問。大前提として、若狭や黒田ではないと思っています。それは他記事でも否定した通り。
では、「それ以外の誰なのか?」という部分ですが、これは別記事にて考察させてください。
というのも、この3人以外の候補者となると「赤井務武」「羽田浩司」「高飛車な女」「ジュノ・グラス」「常盤栄作」などなど、全くの新説を展開しなきゃいけないんですよね。それなりのボリュームになってしまうので(笑)、今回はここまで。
今後も「ラムは誰なのか?」をテーマにさまざまな伏線を拾っていく予定ですので、よろしくお願いしますー!
考察の結論
3 Lines Summary
- 脇田はラムの影武者である可能性も高い
- 脇田は変装した姿ではない or 変装した上であえて眼帯をつけている
- 「Time is money」は読者ではなく安室に向けたアナグラム
考察拝見しました。私もラムは三人の中ではないと思っています。つまりラム自身は目が見えない、もしくは動くことができないのではと思っています。例えば、ラム本人は海外にいるとか。それなら工藤新一の情報を知らない理由にはなります。
ゼロの執行で、協力者を前面に出していたのが引っかかっていました。協力者=影武者という意味だったら面白い展開になりそうですね。
青山先生は、若狭、黒田、脇田の中にラムがいるとおっしゃっていたので、
影武者説はともかく、領域外の妹の可能性は無いと思うのですが、、
えっと、もしかしたら誤解されてるかもしれないので…まず僕は領域外の妹がラムだとは一切考えてないです。あくまでもラム編スタート当初は領域外の妹=ラム候補の1人として描写されてた、ということです。だから、「インチキ」の紅茶が「4つ」でも暗喩として成立するのだと指摘してます。
もうちょっと補足すると、青山先生が3人の中にラムがいると明言したのは2018年12月発売のブラックプラスのインタビューです。この頃にはもう領域外の妹=ラム候補の1人というミスリードは終えているので、確かに青山先生にとってラム候補者は「3人」になっています。ですが、「インチキ」描写時点では事情が異なり、ラム=浅香=領域外の妹というミスリードが存在したので、青山先生にとってラム候補者は「4人」だった可能性があると。
で、この記事を書いてる時点でも「3人の中にラムがいる」とは明言されてなかったので、候補者全員ミスリードという「インチキ」説も成り立ってたというわけです。現時点では候補者全員がラムじゃないという展開は消えたと思います。
横からすいません。
HIROさんは現時点で誰がRUMだと思われていますか?
ブログの時点では影武者でない場合脇田が濃厚とされていましたが変わらずでしょうか。
最近脇田公安説や黒田の本物(入れ替わる前)がRUM説をやたらと目にするんですがこれに関してはどうお考えですか?
私は脇田が公安なら、脇田の興味がコナンに移るのを安室が避けようとしていた説明がつかないと思っているのですが。
よろしくお願いします。
僕は変わらずに脇田ですね。本物の黒田=ラム説もたいへん興味深いと思いますが、大前提として事故に遭って10年間、昏睡状態である点をどう説明するかがネックです。まあ漫画なので、昏睡状態になってるのを隠れ蓑に警察病院から指示を出してたとかできるかもしれませんが…。
それだけでなく組織臭の問題とか、ニセ黒田が影武者として動き出すタイミングと公安の任務(啄木鳥会の調査)が一致してしまうとか、いくつか噛み合わない部分があるんですよね。この辺りをクリアできたら現実味を帯びてくると思います。
ご指摘の点についてですが、仮に脇田=公安だとして、安室さんが脇田の興味がコナンに移るのを避けようとしてた理由を成り立たせるなら、「ニセ黒田=ラムの影武者1号で本所属は公安、脇田=ラムの影武者2号で本所属は組織、いずれも敵対組織にスパイしてる」という形になるのかなと。
あと、おそらく脇田=公安説の発端となってる黒田と脇田のスマホの一致については、結構前にちゃんと解決できる説明を思いついたはずなんですが…忘れちゃいました笑 でも、何か別の理由で説明できたと思います!笑
返信ありがとうございます。
そうなんですよね。10年かそれに近い間No.2がいない状態だったって変ですよね。
目覚めないかもしれないのに。
それに自分達で回復させようと試みず、警察病院に放置していたというのもそんなことするかなと思います。
なるほど。脇田がRUMでなくても組織の者なら安室が庇う理由になりますね。
なんか脇田とスコッチの関係が親密だったのではと疑っている方々がおられて、そこから脇田はRUMでなく公安だという説のようです。
ふとすごいいい考えが浮かんででもすぐ消えてしまうことコナンでは結構ありますね笑
ありがとうございました。