原作1021話で、長野県警の警部・諸伏高明がスコッチの兄だと発覚。予想外の展開にファンも度肝を抜かれました。
一方で、これに伴って“ある疑問”も生まれます。それは「黒田兵衛が長野県警に出向した理由」。高明がスコッチの兄だと考えると、黒田が長野県警に出向したのにも思惑がありそうですよね。
実際に考察してみると、やはりそこには明確な狙いがあった様子。さらには、黒田が警視庁の管理官に就任した理由も見えてきました。
今回は、黒田が長野県警に出向した理由について考察します。
黒田が長野県警に出向した理由は2つ
結論からお伝えすると、黒田が長野県警に出向した理由は2つあると思います。
- 楠田陸道の拳銃の入手ルートを探るため
- ある「ラム候補者」の調査のため
厳密には、①をきっかけに②へと繋がった、という流れかなと。
まずは①の理由、「楠田陸道の拳銃の入手ルートを探るため」から説明しますね。重要なのは高明やスコッチ(景光)の関わってくる②なので、サクッといきます。
黒田は楠田陸道の拳銃の入手ルートを探っていた
赤井「奴には拳銃であの世に逃げられてしまったがな…」
(名探偵コナン58巻より引用)
赤黒クラッシュ編にて、組織の構成員・楠田陸道が自殺に使用した拳銃。
黒田はその入手ルートを探っていたのだと思います。根拠は2つ。
根拠① 公安は拳銃の入手ルートを探っている
赤井「楠田陸道が自殺に使用した拳銃だ…入手ルートを探れば何かわかるかも知れん…ここは日本…そういう事はFBIより君らの方が畑だろ?」
(名探偵コナン85巻より引用)
赤井は楠田の拳銃を公安に渡し、入手ルートを探るように促しています。
いくら憎き赤井から渡されたとはいえ、公安がこんな重要な手がかりを放置するはずありません。つまり、水面下で入手ルートを探っていることは確実。
そもそも、58巻のエピソードに85巻で触れたということは、楠田の拳銃の入手ルートは今後のストーリーに間違いなく関わってくる。でないと、読者をかく乱するだけの描写になってしまいますからね。
赤井の「入手ルートを探ったら何かわかるかも」というセリフは、「入手ルートを探って新事実発覚」という展開に向けたフラグだと考えるべきでしょう。
根拠② 長野県警の「啄木鳥会」は拳銃の密売を行っていた
上原「長野県警には啄木鳥会っていうグループが存在するらしいって…」
(名探偵コナン86巻より引用)
そして、長野県警には「啄木鳥会」という拳銃の密売グループがありました。おそらく黒田は、彼らを拳銃の入手ルートとして調査していたのではないでしょうか。
黒田「聞いた事ないがどんなグループなんだ?」上原「それが…私が元刑事だと話したら口を噤んでしまって…」
(名探偵コナン86巻より引用)
黒田は啄木鳥会のことを知らない素振りを見せていましたが、これは演技。
なぜなら啄木鳥会には、かねてより悪い噂が流れていました。公安の情報網があれば、拳銃の入手ルートとして候補に挙がっていた可能性は高いです。
赤井「ここは日本…そういう事はFBIより君らの方が畑だろ?」
(名探偵コナン85巻より引用)
また、このセリフから読み取れるのは、赤井ほどの推理力を持ってしても拳銃の入手ルートはわからなかったということ。
逆に言えば、推理力だけでは入手ルートは掴めない。つまり、公安は今後、FBIにはない情報網や捜査権を駆使して入手ルートを割り出すと予想されます。
公安が「警察内部を探っている」という状況は、今後の展開ともばっちり一致しそうですね。
黒田が長野県警に出向したのは、ある「ラム候補」を探るため
以上を踏まえると、黒田が啄木鳥会をマークしていたのは濃厚。しかし、新たな疑問も生まれます。
それは、なぜ公安のトップである黒田が、直々に入手ルートを探っているのか。楠田の拳銃は重要な手がかりですが、部下に任せてもいいレベルのミッションにも思えます。
そう考えると、黒田の狙いは啄木鳥会だけではない。おそらく黒田は、ある「ラム候補」の調査も兼ねて長野県警へと出向したのだと思います。
それは誰か。
ずばり、大和敢助ではないでしょうか。
根拠① 大和がシロなのはあくまでも読者目線
「さすがに大和警部はラムじゃないでしょ」と思った人も多いかもしれません。もちろんその通りで、大和がラムである可能性は限りなくゼロに近いです。
しかし、それはあくまでも読者目線での話。
私たち読者は、これまでの大和の活躍に加えて、若狭や脇田といった別のラム候補も知っている。だからこそ「大和はシロ」だと推理できるわけですが、キャラクター目線ではその限りではありません。
灰原「屈強な大男だとか…女のような男とか…年老いた老人とか…それらが全部影武者だって言ってた人もいたわ…」
(名探偵コナン86巻より引用)
改めて思い出してほしいのですが、ラムの特徴は「隻眼」「屈強な大男」「女のような男」「杖をついた老人」の4つ。大和は(解釈の仕方によっては)そのすべてに一致します。
これは現実世界でも滅多にない一致で、おまけに大和はかなりの切れ者。ラムを追っているキャラクターにとっては、疑わないとおかしいレベルの怪しさです。
コナン「長野県警大和敢助警部…隻眼で大柄で長髪で杖をついてる…灰原が言ってた黒ずくめの組織のNo.2だっていうラムの人物像に最も近しい人物…ま、まさか本当にこの人が…」
(名探偵コナン86巻より引用)
事実、コナンも一度は大和に疑惑をかけています。
コナンはラムの特徴を灰原から聞きましたが、黒田にも安室という情報源がある。つまり、黒田もラムの特徴を把握しているはずなので、同じように大和を疑ったのは確実。
根拠② 景光の兄・高明の存在
さらにもうひとつ、黒田が大和に目をつける理由があります。
それこそが、大和の幼馴染であり、景光の兄でもある諸伏高明の存在です。
景光「悪い降谷…奴らに俺が公安だとバレた…」
(名探偵コナン90巻より引用)
組織にスパイだと見破られた景光ですが、なぜバレたのかは明らかになっていません。公安も当然、その理由を調べているはず。
黒田はこれに対し、以下のような仮説を立てたのではないでしょうか。
- 大和はラム、あるいはその影武者である
- 大和は幼馴染である高明の弟・景光を知っていた
- そのため景光がスパイだと見破られた
つまり、大和=ラムなら、景光がスパイだとバレた理由にも説明がつく。黒田はそこまで推理して、大和を疑ったのだと思います。
つけ加えると、スパイだと発覚したのは景光だけで、安室はバレていません。ということは、公安に裏切り者がいて、組織に情報をリークした可能性は低い。
逆説的に、景光自身やその周辺からバレたことになるため、高明からバレたなら辻褄も合います。この点も、黒田の推理を後押ししたのではないでしょうか。
根拠③ 黒田は「ラム候補」に対して、直接的なアプローチを取る
また、黒田はその後、ラム疑惑のある若狭にも接触しています。
つまり、黒田は「ラム候補者」に対しては、危険を厭わずに接触するやり方。「大和を追って長野県警に出向する」という大胆すぎるアプローチも、実は黒田の行動パターンと一致します。
余談ですが、この行動から察するに、黒田はおそらく「ラムを捕まえるのは自分だ」という矜持を持っているか、あるいは「公安の誰よりもラムを判別できるのは自分」と考えている。
二人の間にどんな因縁があるのかも、気になるところですね。
本物の「黒田兵衛」と入れ替わった理由
以上を踏まえると、黒田の行動はこう。
- 楠田の拳銃の入手ルートを探る
- 長野県警の「啄木鳥会」に目をつける
- 長野県警を調査し、ラムと特徴の一致する大和を発見
- 大和の幼馴染は景光の兄・高明。「大和=ラムなら、スコッチの正体を見破ることも可能」と考える
- 大和を「ラム候補」として認識
- 大和と啄木鳥会の調査のため、長野県警への潜入を目論む
- 本物の黒田兵衛と入れ替わり、出向という口実を作る
つまり、黒田は「啄木鳥会」や「諸伏高明」の存在を根拠に、大和をラムとして疑っていた。長野県警に出向したのは、その調査のためということです。
さらに言うなら、黒田はこの出向という口実を作るために、本物の「黒田兵衛」と入れ替わったのではないでしょうか。
以下の記事でも書きましたが、裏理事官である「現在の黒田」と10年前に意識不明になった「黒田兵衛」はおそらく別人。
裏理事官に就任する人間は表向き、警察組織から除名されます。そのため、長野県警への出向には、実在する別の刑事の身分を用意しないといけません。
そこで目をつけたのが、10年前から意識不明の「黒田兵衛」。
顔を包帯で覆い、記憶の食い違いも事故の後遺症で誤魔化せる「黒田兵衛」は、入れ替わるには最適の人材だったはずです。
黒田の出した結論
また、黒田は現在、警視庁の管理官へと就任しています。
言い換えれば、長野県警での調査は完了したということ。黒田は一体、長野県警に対してどんな結論を出したのでしょうか。
まず、大和への疑いは晴れたと考えていいでしょう。
啄木鳥会の事件で黒田と大和、さらに高明は、巧みなコンビネーションで犯人を罠にかけています。これは黒田が大和を信頼している証拠です。
では、啄木鳥会への疑惑はどうなのか。
黒田「三枝にも…後でこっそり事情聴取せねばならんようだが…どうやらそれはお前達に任せる事になりそうだ…」
(名探偵コナン87巻より引用)
啄木鳥会の事件後、黒田はすぐに東京へと向かっています。
本来なら事情聴取も自ら行うべきですが、そうしないのは「事情聴取を行う必要はない」と考えているから。つまり、「啄木鳥会と組織は無関係」という結論なのかなと思います。
黒田が警視庁の管理官に就任した理由
さて、長野県警への出向にこれだけの意味があったなら、警視庁の管理官になったのも間違いなく意味がある。
最後に少しだけ、黒田が警視庁の管理官に就任した理由についても触れておきましょう。
おそらく黒田は、元管理官である松本清長の調査のために警視庁へと出向いたのだと思います。
松本も大和と同様、片目に傷を持つ人物。ラムの特徴のひとつである「大柄な大男」とも一致します。
黒田は「ラム=松本」という仮説を立て、過去に関わった事件や人間関係を調査するべく、管理官へと就任したのではないでしょうか。
これが目的のすべてではないかもしれませんが、目的の一部である可能性は高いと思います。黒田の行く先々に隻眼の刑事が関わっているのは、偶然にしては出来過ぎですからね。
この点はもう少し考察を固めたら、改めて記事やツイートにまとめたいと思います。
考察の結論
3 Lines Summary
- 黒田は大和をラムと疑い、長野県警へと出向した
- その根拠は「啄木鳥会」と「諸伏高明」の存在
- 現在は調査を完了しており、啄木鳥会もおそらくシロ
はじめまして!
非常に興味深い考察で素晴らしいと思いました。
啄木鳥会と楠田の拳銃につながりがあるのでは?というのは自分にとって盲点でした。
Hiroさんは鋭い着眼点をお持ちなので、記事を読むのがとても楽しいです。
ところでひとつ思ったことがあるのですが、もし現在の黒田(以下、黒田管理官)が本物の黒田(以下、本物黒田)と入れ替わっているとして、二人とも右目を負傷していることはどう考えられるのでしょうか。
おそらく警察病院で本物黒田を診察した医者は事故で右目を負傷したことを知っていると考えられます。(右目を負傷するほどの大けがなら手術するか医者が診るはずですので)
「まるで別人のようだった」といっても、入院する時には右目を負傷していなかったのに、(入れ替わって)包帯を取った時に右目を負傷していたら、さすがに医者や看護師に別人だと気づかれてしまいます。
ですが、実際包帯を取って右目を負傷しているとわかった現在でも黒田管理官は怪しまれずに入れ替わりに成功しています。(今、入れ替わっていることが正しいと仮定しています)
これはもともと本物黒田も右目を負傷していたから医者や看護師も「まるで別人のようだった」と思っただけで、深くは怪しまなかったと考えられます。
つまり、本物黒田と黒田管理官が入れ替わっているとすると、二人とも右目を負傷していないとこの入れ替わりは成立しないことになります。
黒田管理官は長野県警に赴くために、入れ替わるには本物黒田が最適と考えています。Hiroさんもおっしゃったように事故で記憶が抜け落ちていることにできるということと、事故のストレスで髪も変色したことにできるからです。
しかし、目の負傷はそう簡単に説明できるものではありません。
黒田管理官が長野県警に赴くために警察病院にたまたま事故で入院していた本物黒田がいて、たまたまその本物黒田が右目を負傷していたため、同じく右目を負傷していた黒田管理官が入れ替わりを実行した、というのはちょっと偶然が重なりすぎているのかなと思います。
仮に本物黒田が右目を負傷していて、黒田管理官は右目を負傷してなかったとすると、黒田管理官が入れ替わるには意図的に自身の右目を負傷させなくてはなりません。
そう考えると、自分の片目を失ってまで入れ替わる必要があるのでしょうか?
片目を失うくらいならもっと違う方法を模索しようとするのでは、と考えてしまいます。
話がとても長くなってしまいましたが、私が思ったことは「入れ替わっているとすると、二人とも右目を負傷しているというのは偶然が過ぎるのでは?」ということです。
黒田管理官が本物のままか否かについてはまだまだ議論の余地はあると思いますが、この点についてHiroさんはどうお考えでしょうか?
私のコメントの内容にはわかりにくい点もあるかもしれませんが、もしよろしければ返信をお願いします。
長文失礼いたしました。
お返事遅くなって申し訳ないです!考察ご覧いただきありがとうございます。
なるほど、一理ありますね〜。「別人のようだった」という発言からして、包帯を取った看護師は元の黒田の顔を知っている。となると、おそらくどんな怪我を負ったのかも知っているので、元の黒田と偽黒田は少なくとも同じような怪我の持ち主なのは確かです。
ただ、それはもしかしたら「右目の負傷」の一致ではなく、「顔面の大きな火傷」の一致だったのかもしれません。つまり、看護師は「元の黒田は顔に火傷を負っている」ことは把握していたけど、右目の負傷は知らなかったというパターン。
面識はあったものの当時の担当じゃなかったとか、いくらでも理由はつけられます。医師に関しても警察病院の人間なので、口裏を合わせることは可能かなと。
また、「別人のようだった」というセリフは、「それでも別人だと気づかれない程度の違いだった」という解釈には限らない気もします。もし「本気で別人じゃないかと疑っていた」としても、同じセリフに帰結するので。
ここからは妄想ですが、安室はかつて火傷赤井に変装し、顔の右側を火傷したように装っていました。その際に火傷の特殊メイクを身につけたとか。それを偽黒田に仕込んでいたら、右目の負傷から火傷跡まで全て変装、という展開もあり得そう。自由自在な変装は不可能でも、限定的な変装なら習得できることは沖矢の例からもわかります。
辻褄を合わせるとしたら、こんなところでしょうか…笑
考察の一助にしてください!
お忙しい中、ご返信ありがとうございます。
たしかに、別人だとバレなかったのには色々な理由が考えられそうですね。
Wikipediaによると、警察病院は警察組織には含まれない民間の医療機関らしいのですが、赤と黒のクラッシュの時のように院長や医師などと口裏を合わせることも可能だと思いますので、いくらでも偽装できますね。
やはりまだまだ黒田管理官については謎が多いですので、今後の原作の展開に期待したいと思います。私もHiroさんと同じく黒田管理官はゼロの理事官(警察庁警備局警備企画課・情報第2担当理事官)で間違いないと考えています。
最後に、私の拙いコメントに返信していただき誠にありがとうございます。
これからもHiroさんの考察記事を楽しみにしています!
はじめましてコメントさせていただきます。
『黒田はおそらく「ラムを捕まえるのは自分だ」という矜持を持っているか、あるいは「公安の誰よりもラムを判別できるのは自分」と考えている。』すごい考察だと感じました。
黒田管理官目線で大和警部(35)がRUM候補だったということは、本物のRUMの年齢は30から40歳ぐらいと黒田は考えている可能性はないでしょうか?
現在挙がっているRUM候補は黒田(50)、若狭(37)、脇田(56)なので一応若狭が該当しているも若狭はRUMなのか疑問が残ります。
3人の中に本物のRUMがいないと考えたとき、30から40歳ぐらいのキャラクターを探せというヒントとしても青山先生は大和警部(35)を示したのかなと。
コメントありがとうございます!お楽しみいただけて幸いです〜。
確かにそうですね! 17年前の事件に関与できる年齢(当時18歳以上)ということで、それこそボーダーを35歳以上としてプロファイリングしているのかもしれません。
とはいえ、ラムが17年前に18歳というのも相当若い気はするので、黒田は大和をラム本人ではなく影武者として疑っていた可能性もありますね。