赤井秀一を突き動かす宿命。宮野明美の「メールのP.S.」と「彼女との約束」の内容とは?【名探偵コナン考察】

明美「大君…もしもこれで組織から抜けることができたら…今度は本当に彼氏として付き合ってくれますか? 明美 P.S.」
(名探偵コナン58巻より引用)

赤黒クラッシュ編で描写された、宮野明美から赤井秀一へのメール。明美が銀行強盗を起こす前に送ったと思われるメールですが、P.S.の続きが見切れています

今回は、宮野明美のメールのP.S.を考察。さらには、

  • 沖矢昴の「彼女との約束」というセリフの意味
  • 赤井秀一の「そんな顔をするな」というセリフの意味
  • 銀行強盗を控えた宮野明美の心理
  • 灰原哀に対する赤井秀一の心理
  • 赤井秀一は死亡フラグを立てている?

など、赤井の視点から見た宮野姉妹との関係についても分析します。

 

1. P.S.の内容は「妹を守って」

結論から言ってしまうと、P.S.の内容は「妹を守って」だと思います。

ピンポイントでこの文面とは限りませんが、その可能性も十分にあるかなと。少なくとも「妹に自由な人生を送らせて」など、守ることを兼ねた内容なのは間違いなさそう。

 

赤井秀一の抱えている「彼女との約束」

P.S.の内容を考えるにあたり、大きなヒントになるのがこのシーン。

灰原「そうしたいのなら無理やり連れ込めば?」沖矢「そんな無粋な真似はできませんよ…」(彼女との約束なんでね…)
(名探偵コナン77巻より引用)

赤井は「彼女」と何らかの約束を交わしています。そして、その内容は灰原に対して「無粋な真似はできない」と思わせるようなもの

 

言うまでもありませんが、この「彼女」は明美の可能性が高いです。

明美以外の候補者として考えられるのは、世良真純とメアリー世良くらい。しかし、両者ともに赤井と約束をしているとは思えない言動を見せています。

 

世良「灰原…あの茶髪の女の子か…」
(名探偵コナン1025話より引用)

▲これまでに何度も灰原に興味を示してきた世良ですが、その正体までは掴めていません。また、世良は動画で大人の灰原を見たこともあるため、宮野志保を知らないのは確実です。

メアリー「ならば是が非でもその薬の開発者を捜し出し…薬をせしめろ…」
(名探偵コナン95巻より引用)

▲この言い方からしてメアリーも灰原の正体を知りません。もし知っているなら、灰原がAPTX4869の解毒薬の開発者であることは容易に推測できるはず。

さらに「是が非でも薬をせしめる」という行動は、灰原に対する「無粋な真似」に当たります。いくらメアリーが灰原の正体を知らないとしても、赤井と約束していた張本人が「無粋な真似」をさせているのではギャグにしかならない

 

つまり、赤井が約束を交わしている相手は明美。

そして、明美との約束に繋がりそうな伏線は、作中で「メールのP.S.」以外に見当たりません。

 

補足:厳密に言えば、赤井の「そんな顔をするな…命に代えても守ってやる」というセリフも、明美との約束に繋がる可能性のある伏線です。ただ、これについては個人的に別の解釈をしているため、後述します。 

 

コナンの「守んなきゃいけねぇ奴」というセリフ

もちろん、これだけでは具体的な約束の内容まではわかりません。そこで注目したいのが、コナンのこのセリフです。

コナン「守んなきゃいけねぇ奴が…いるからな…」
(名探偵コナン85巻より引用)

コナンは優作に「赤井は工藤邸に戻ってくるのか」を聞かれ、このように回答。コナンは阿笠邸を見ながら発言しているので、当然ながら「守らなきゃいけない奴」は灰原のこと。

つまり、赤井は灰原を守る使命を持って動いていることになります。だとすれば、約束の内容も「灰原を守ること」なのが自然。

 

そう考えると、コナンの「守らなきゃいけない奴」というセリフは、沖矢の「そんな無粋な真似はできませんよ…」(彼女との約束なんでね…)というセリフと綺麗に噛み合います。

守るという行為は「無粋な真似はできない」という意味を兼ねていますし、「守らなきゃいけない」というマストの言い回しは「彼女との約束」と一致しますからね。

 

沖矢昴は実際に灰原哀を守っている

そして、実際に沖矢は再三にわたり、灰原を守る行動を見せています。いくつか例を挙げていきましょう。

 

安室「ん? ハッキングされてる…誰だ!?」
(名探偵コナン78巻より引用)

▲たとえば、安室が毛利小五郎のPCから灰原の動画を確認しているシーン。沖矢は小五郎のPCにハッキングをかけるという荒業で、灰原を狙う安室の動向を掴んでいます。さらにその後のミストレ編でも、灰原を守る行動を取っていました。

 

灰原「この前あなたがお裾分けしてくれたクリームシチュー…野菜が全然煮込まれてなくて…まるで盗聴器でここの会話を聞いてて…事件にかかわる為に慌てて作りかけの料理を持って来たって感じだったわよ?」
(名探偵コナン89巻より引用)

▲もはやお馴染みとなった“おすそ分け”のシーン。沖矢は何かと名目を作っては阿笠邸に訪れ、灰原を危険から守ろうとしています。

ちなみに、一見すると突飛にも思える「沖矢が阿笠邸の会話を盗聴器で聞いている」という発想ですが、灰原はミストレ編で沖矢にスマホをハッキングされていたことをコナンから聞いています(笑)。そもそも灰原は沖矢の正体に勘づいている様子ですし、この発想は現実的。

 

沖矢「彼女の警護…任せたぞ…キャメル…」
(名探偵コナン89巻より引用)

▲自分が不在になる際には、キャメルに護衛を任せています。こうして部下を動かせるようになったのは、FBIに生存を明かしたことによるメリットの一つ。

 

赤井「それに、俺はまだその茶髪の少女と顔を合わせるわけにはいかないんでな…」
(名探偵コナン42巻より引用)

▲さかのぼれば、赤井は二元ミステリー編の段階ですでに、灰原を守るために暗躍していたようにも思えます。となると、バーボン編になってから描写の増えた「赤井は灰原を守ろうとしている」という設定は、実はベルモット編の時点で出来上がっていたのではないでしょうか。

 

このように、赤井は作中で一貫して灰原を守る行動を見せています。やはりメールのP.S.の内容は、「妹を守って」だと考えて良さそうです。

 




2. 宮野明美の心理

また、明美の心理を考えても、赤井に「妹を守って」と頼むのは極めて自然です。どういうことか説明しますね。

 

宮野明美は自己犠牲精神の持ち主

明美の心理を理解する上で、最初に押さえておきたいのが明美の性格。

蘭「警察呼んだから…もう少しの辛抱だから…お願い!!」灰原(お姉ちゃん…)
(名探偵コナン42巻より引用)

二元ミステリー編で蘭は身を呈して灰原を守り、灰原はそんな蘭を明美と重ねています。このように、明美と蘭は似通った性格であることが示されているキャラクターです。

そして、蘭はベルモットに「エンジェル」と呼ばれている人物。そのきっかけは、ニューヨーク編で通り魔に扮したベルモットを、蘭が危険を省みずに助けたことでした。

つまり、蘭は強い自己犠牲精神の持ち主であり、明美も同様の性格なのが伺えます。

ベルモットが蘭を「エンジェル」「宝物」と呼ぶ理由【名探偵コナン考察】

2017年12月10日

 

赤井「いや…思い出していたんだ…おまえによく似た女を…平静を装って陰で泣いていた…バカな女の事をな…」
(名探偵コナン37巻より引用)

さらには灰原だけでなく、赤井も蘭と明美を重ねています。「平静を装って陰で泣く」というのは、これも自己犠牲精神を感じさせる行動。

また、ミストレ編で灰原はベルモットに狙われていることを察知し、APTX4869の解毒剤を飲もうとしました。幼児化した自分の遺体が見つかることを防ぎ、少年探偵団を守るためです。このように自分よりも他人の心配を優先する灰原に対し、赤井は「さすが姉妹だ…行動が手に取るようにわかる…」と話しています。

 

以上を踏まえると、明美が自己犠牲精神の持ち主なのは明らか。ここからはそれを前提に考察を進めていきましょう。

 

銀行強盗を控えた宮野明美の心理

さて、明美が自己犠牲精神の持ち主だとすると、自ずと銀行強盗を起こす前の心境も見えてきます。

そもそも明美が犯罪に手を染めることになったのは、灰原を助けるための苦肉の策。逆に言えば、明美は犯罪を決意するほどに灰原を助けたかったことになります。

 

だとすると明美は、「銀行強盗に失敗した場合」や「ジンが約束を破った場合」の保険も用意しようと思ったはず。

銀行強盗を成功させられる可能性は低いですし、あのジンが大人しく約束を守るとも思えませんからね。ここで保険を用意しなければ、灰原を守るという最大の目的を高確率で果たせなくなってしまいます。

 

ましてや、明美は赤井へのメールで「組織から抜けることができたら、今度は本当に彼氏として付き合ってくれますか?」とメッセージを送っています。

明美が銀行強盗に成功した場合、FBIの赤井と付き合うことは立場上、不可能です。それでもあえてこのメールを送ったということは、明美はすでに死を覚悟していたのだと思います。そして、決して叶わない自らの願望を、赤井への最後のメッセージとして残した。

 

そう考えると、明美はジンに殺されることまで計算に入れている。自分の死後も灰原の安全だけは守られるように、保険を用意しようと考えた可能性は高いです。

 

たった1枚の「赤井秀一」というカード

とはいえ、実際のところ明美に打てる手は少ないです。あくまでも一般人として育ってきた明美には、灰原を守れるような人脈や後ろ盾は存在しませんからね。

しかし、一人だけ例外も存在します。それがFBIのエースである赤井秀一。

 

赤井「お前知ってたな? 知っていてなぜ俺から離れない!? お前を利用していたんだぞ!!」
(名探偵コナン58巻より引用)

明美は赤井との交際中、その正体がFBIであることを悟っていました。そして、組織でライというコードネームを与えられ、あのバーボンのライバルとして目されていた赤井なら、妹を守り抜ける実力者なのも推測できます。

 

つまり、明美にとって赤井はたった1枚の手札であり、最強のワイルドカード。

こうした背景を踏まえても、明美が赤井に「妹を守って」と頼むのは必然的な流れですね。

 

3. 赤井秀一とコナンは「彼女との約束」をいつ共有したのか

また、先ほどもお話しした通り、赤井とコナンは「彼女との約束」を共有しています。2人はどのタイミングで情報を共有したのでしょうか。

おそらくですが、赤黒クラッシュ編の最中に共有したのだと思います。

 

その根拠となるのが、工藤邸に居候することになった沖矢に対するコナンのセリフ。

コナン「留守はしっかり守ってよ…」
(名探偵コナン60巻より引用)

この意味は「留守はしっかり(灰原を)守ってよ」ではないでしょうか。

だとすると、情報を共有したのはこれより前。赤黒クラッシュ編で今後の計画を立てたときか、コナンと有希子が赤井を変装させたときのどちらかになると思います。

 

そう考えると、木馬荘が阿笠邸の近所なのも、沖矢が近くで灰原を守るためかもしれません。

また、先ほども少し触れた通り、赤井はおそらくベルモット編の頃から灰原を守ろうとしていました。ですが、自分が露骨に灰原の近くにいると、むしろ危険を招いてしまう。ジンが水無伶奈に赤井の抹殺を命じたのは、赤井にとっては“渡りに船”だったのではないでしょうか。

 

有希子「とにかく、しっかり守ってあげなさいよ!新ちゃんだけが頼りなんだから…」
(名探偵コナン41巻より引用)

▲ベルモット編の有希子の「新ちゃんだけ」というセリフも、もしかしたら「灰原を守ろうとしているのは新一だけではない」という展開に向けた暗示だったり。さすがに深読み?(笑)

 




4. 「そんな顔をするな…命に代えても守ってやる…」の意味

ただ、赤井が灰原を守る理由は、明美との約束だけではなさそう。おそらくは、過去に破ってしまった“もう一つの約束”も関係していると思います。

 

そのヒントとなるのが、灰原のこの回想シーン。

赤井「そんな顔をするな…命に代えても守ってやる…」
(名探偵コナン77巻より引用)

このシーンで注目したいのが、灰原の主観の映像になっていることです。

おそらく灰原は、明美の恋人である諸星大に「姉を危険な目に遭わせないで」などと頼んだのではないでしょうか。それに対して赤井は「命に代えても守る」と約束した。

しかし、最終的に赤井はその約束を破ってしまいました。だからこそ明美との約束だけは、何としても果たそうとしているのだと思います。

 

余談ですが、この仮説が正しかった場合、

  • 明美は「妹を守って」
  • 灰原は「姉を守って」

と、それぞれ赤井を頼ったことになります。

2人の姉妹愛や自己犠牲精神がよく表れていると同時に、赤井の背負った業の深さも感じられる設定ですね。

 

5. 赤井はいつ「その茶髪の少女と顔を合わせる」のか?

最後に、赤井の「まだその茶髪の少女と顔を合わせるわけにはいかない」というセリフについても考えてみたいと思います。

 

注目したいのは「まだ」という言い回し。ここから読み取れるのは、いつかは顔を合わせるつもりであることです。赤井なりに「顔を合わせるためにクリアするべき条件」を設定しているのが伺えます。

もしかしたら赤井は、組織を壊滅させるまでは灰原と顔を合わせられないと考えているのかもしれません。だとするとこのセリフは、赤井の強い覚悟の表れ。

 

一方で少し気がかりなのが、赤井が死亡フラグを立てているように見えること。

ここまでの考察が間違ってなければ、赤井は灰原に「命に代えても明美を守る」と約束し、守れなかった。現在はその明美の意思を受け継ぎ、灰原を命がけで守っている。

この状況は正直、ほかの作品なら死亡フラグになったとしてもおかしくありません。

 

ただ、青山先生によると名探偵コナンのラストはハッピーエンドのようなので、味方のメインキャラクターを退場させる可能性は限りなく低いと思います。

ありそうな展開としては、終盤で赤井が灰原を守るために、身代わりとなって銃弾を浴びるとか。赤井秀一の死亡フラグは、「実際に命は落とさないけれど、命がけで守る」という見せ場に向けた布石のような気はしますね。

 

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5 件のコメント

  • はじめまして。
    いつも大変興味深く拝読させて頂いております。

    ブラックインパクトあたりまでの赤井なら最終的に格好良く華々しく散るタイプのキャラクターだったと思いますが、今の赤井には微塵もそんな感じはありませんよね。
    一匹狼タイプかと思いきや、レギュラー〜準レギュラーの誰よりも家族がゾロゾロと出てきましたし。
    あとはただの個人的な予想ですが、終盤で灰原を守って死ね者がいるとしたら、それはベルモットだろうと思います。

    • コメント遅くなりまして申し訳ございません。いつもご覧いただきありがとうございます!

      死亡フラグこそ立ててはいるものの、赤井さんが散りそうな感じはしませんよね(笑)。赤井さんって家族やFBIの仲間たちとの壁もあまりないですし、一匹狼に見えて根っこは陽キャラというか。陽キャラに見えて孤高な安室さんとは対極のタイプだなあと思います。

      ベルモットが灰原を守って死ぬとしたら、エレーナが「ヘル・エンジェル」ではなかったことを灰原に証明されて〜って流れになりそうです。守るときのセリフは「人が人を助ける理由に論理的な思考は存在しない」でしょうか。

      「エンジェル」に憧れるベルモットには、自身が「エンジェル」になる資質もありそうなので、その展開になる可能性もないとは言い切れませんね。

    • はじめまして

      哀ちゃんを守ってベルモットが死ぬという考えはわたしには全くなかったので

      その考察詳しく聞いてみたいです

      ベルモットは
      漆黒の葬列で

      この街であの女を探さないというくだりよ時に
      ジンに対して
      あら、、、随分入れ込んでるじゃないあの小娘に

      と、嫉妬心を出してるような気がしました

      ブラックインパクトの時は

      シェリーを殺そうと必死でしたよね

      エンジェルが盾にならなければ

      シェリーを殺していたかもしれません

      ベルモットが命を犠牲にするとしたら

      シルバーブレット(新一)
      エンジェル(蘭)
      だと思います

      領域外の妹と哀ちゃんの母宮野エレーナは
      姉妹説がありましたが

      もし本当にそうなら
      赤井秀一と宮野姉妹は
      従兄弟同士になるわけですよね?
      それを赤井秀一が知っているから
      必要以上に守っているのかなと思っています

      世良ちゃんが哀ちゃんのことを気になっているのは
      アポトキシンで幼児化したという疑いだけではなく
      血縁関係があるからではないでしょうか?

      もしかしたら従姉妹の宮野志保じゃないかと

      あくまでわたしの憶測なので
      わかりませんが

      赤井一族と宮野一族のお話に今後も期待したいと思います

      コナンのお話で黒の組織の次に重要な家族だと勝手に思っています

  • 確かに作中で最も死亡フラグが立ってるのは赤井さんですね。でもHiroさんの言うようにそうなるとは思えない。赤井さんは事実上一回死んでて、仲間と家族が悲しみに暮れて、そしてまた生きてるとわかって喜びを取り戻したと思いきや最後は本当に逝ってしまうというのは、むごいですよね。その悲しみを持ったまま最後は新一と蘭が結婚してハッピーエンド!的な事は先生はやらないと思います。

    • コナンは基本的にハッピーエンド路線になりそうですよね〜。一部では安室さん死亡説も囁かれていますが、この可能性も極めて低いと思ってます!

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    ABOUTこの記事をかいた人

    子供の頃にベルモットの変装トリックに騙されて以来、生粋のコナンファン。考察は「DEATH NOTE」などにも似た頭脳エンタメだと思います。読み物として面白くなるように「わかりやすさ」と「サプライズ」を大切にしています。本業も物書き。