名探偵コナン1038話 感想&考察。赤井家の情報共有と、メアリーがコナンを疑う理由【サンデー感想】

名探偵コナン1038話「隠すより現る」感想&考察です。

前回に引き続き、赤井家の謎が明かされた回でしたね。務武の新たな設定も発覚し、赤井家の情報共有についてはかなり見えてきたと思います。

ということで今回は、

  • 赤井家の情報共有
  • 務武の口癖の意味
  • 「暗がりに鬼を繫ぐが如く」の意味
  • メアリーの思惑とコナンを疑う理由
  • 世良は沖矢の正体に気づく?

など、名探偵コナン1038話から気になったシーンを考察します。

 




1. 赤井家の情報共有

最初のテーマは「赤井家の情報共有」。今回のシリーズを経て、謎に包まれていた赤井家の情報共有はかなり明らかになりましたね。

 

まず、メアリーが赤井の生存を知らないのは決定的になったと思います。

今回のシリーズで、沖矢は世良に探りを入れてメアリーの幼児化を推測しました。これは赤井がメアリーと連絡を取り合っていない証拠。つまり、赤井がメアリーを調べている時点で、メアリーも赤井の事情を知らないことになります。

 

メアリー「死んだ長男にもその口グセが移っていたな…」
(名探偵コナン1038話より引用)

▲そう考えると、このメアリーの発言も演技ではなく、赤井は本当に死亡したと思っている。やはりメアリーは赤井の訃報を受け、組織の調査に乗り出したのかもしれません。そして、それを組織に悟られ、罠にかけられた。

 

さらに言えば、秀吉もメアリーとは連絡を取り合っていない様子。

もし秀吉がメアリーと繋がっているなら、赤井は世良に探りを入れず、秀吉に母の事情を聞いているはず。赤井は秀吉には唯一、自らの生存を伝えていますからね。

ここから見えてくるのは、赤井&秀吉のペアとメアリー&世良のペアで情報が分断されていること。一部、秀吉と世良で連絡を取り合っている描写はありますが、核心的な情報はお互い共有していないようです。

 

その理由を示しているのが、沖矢のこのセリフ。

沖矢「巻き込みたくないんでね…妹は出来る限り…」
(名探偵コナン1037話より引用)

赤井は世良を組織の騒動に巻き込みたくないと考えています。となると、赤井は秀吉に生存を明かすときにも「真純には黙っていてくれ」と口止めしたはず。赤井と秀吉は、妹を守るためにあえて情報を伏せているということ。

 

そして、それはおそらくメアリーも同じ。

メアリー「しかも大学を卒業したらFBIに入るだなんて…」
(名探偵コナン92巻より引用)

これまでメアリーは赤井のFBI加入に反対したり、秀吉の将棋の7冠に喜んだりしていました。その行動から伺えるのは、子供の幸せを願う純粋な親心

青山先生はSDB 80+で「世良は組織のことを知っている?」という質問に「まだ知らない」と答えています。つまり、メアリーは世良に対しても最小限の情報しか与えていない。家族を巻き込まないために、秀吉にも世良にも情報を伏せているのだと思います。

 

そう考えると、赤井家が情報共有しない理由は「お互いを巻き込みたくない」という家族愛。

赤井がメアリーたちに情報共有するなら「死の偽装」「その経緯」を明かさないといけないし、メアリーが秀吉に情報共有するなら「幼児化」を明かさないといけない。家族の平穏を願うなら、これはいずれも知らせるべきではないこと。

よく「ホウレンソウしなさい」と怒られている赤井家ですが(笑)、当人たちにとっては正しい判断ということですね。

 

2. 務武の口癖が「50:50」

次に取り上げたいのは、赤井の口癖である「50:50」について。もともとは務武の口癖だったようです。

この設定の狙いはもしかしたら、メアリーが「務武の口調だけでなく口癖もトレースしている」と示すことかもしれません。

 

メアリー「暗がりに鬼を繋ぐが如く…江戸川コナンに気を許すな…」
(名探偵コナン90巻より引用)

▲メアリーは過去に「暗がりに鬼を繋ぐが如く」と発言し、それがジンのセリフと一致していました。もしこれが務武の口癖だったとしたら、ジンと接点を持っているのはメアリーではなく務武であると考えられます。

補足: 青山先生はSDB BLACK+で「暗がりに鬼を繋ぐが如く」について質問された際、「(ジンとメアリーの関係は)あるかもね」と回答。セリフの一致は単なる演出ではなく、なんらかの伏線であることを匂わせています。

 

世良「『隠すより現る』か…言い得て妙なナイスなことわざだな…お2人さん?」
(名探偵コナン1038話より引用)

▲そう考えると、今回のシリーズで何度もことわざが登場したのは、「暗がりに鬼を繫ぐが如く」を暗示するヒントだった可能性も。

 

とはいえ、ジンと務武の接点は、現段階ではいまいち不透明ですね。

真っ先に思いつくのは、務武が「組織に潜入していたスパイでジンと師弟関係だった」という説。しかし、そもそも過去のNOCはベルモット曰く3人で、務武はカウントされていない。

ならば、務武が「純粋な組織のメンバー」という説はどうか。その場合、務武=ラムなのが濃厚ですが、ジンは過去に「ラムの抜かった仕事なんざ」と発言しており、ラムへのリスペクトは感じられません。なのに口癖だけ移っているのはおかしい。

 

発想の転換で、ジン=元MI6と考えたほうが辻褄は合うかもしれません。

つまり、務武=MI6で、ジンはMI6の裏切り者という説。あるいは、ジンがMI6に逆スパイとして潜り込み、その際に上司だった男の口癖を真似ている。これなら矛盾は少なそうです。

 

ただ、「暗がりに鬼を繫ぐが如く」は日本のことわざであり、イギリスの諜報機関で口にする状況はあまり想像できません。「50:50」が英語なのは、どこで移った口癖なのかも考えられた設定だと思います。

また、ジンはかつて赤井について「あの方がヤツの何を恐れているのか知らないが」と発言しており、赤井を軽視していました。もし務武と旧知の仲だったなら、赤井のことも特別視しているはず。そう考えると、そもそもジンと赤井家に接点はない気もします。

 

もしかしたら、メアリーが「暗がりに鬼を繋ぐが如く」と発言したのは、ジョディが「A secret makes a woman woman」と発言していたのと同じ理由かもしれません。

つまり、ジンやあの方の口癖が「暗がりに鬼を繋ぐが如く」で、彼らを追っていた務武やメアリーが口癖を真似ているというパターン。慎重なジンの好みそうな言葉ではありますし、これならジンが赤井家を以前から知らなくても成り立ちます。

そうは言ってみたものの、現状ではどの説も決定打に欠けますね。また改めて考えてみたいと思います。

 




3. メアリーのいるホテルの名前

また、1038話でほかに気になった点といえば、メアリーのいるホテルの名前が「HOTEL BOND-SEVEN」になっていること。

これはジェームズ・ボンドと007を組み合わせた青山先生の遊び心ですね。

 

一方で、この事実は見方を変えれば、青山先生が「ホテルの名前に仕掛けを施した事例」とも捉えられます。

ここで思い出したいのが、羽田浩司の殺害現場が「Juke(=アメフトなどにおけるフェイント)Hotel」であること。

これもやはりなにかの暗示でしょうか。17年前の事件には、大きなフェイクが隠されていそう。

 

たとえば、羽田浩司のダイイングメッセージは当初「ASACA RUM」だと思われていましたが、それはフェイクで正解は「CARASUMA」でした。もしかしたら「Juke Hotel」という名前は、この設定を暗示していたのかもしれません。

ほかにも、

  1. 実行犯はラムに見せかけて烏丸だった(だからダイイングメッセージはCARASUMAだった)
  2. 羽田を殺害したのは若狭に見せかけて別人だった
  3. ティーカップについていた指紋は、殺害現場を示す伏線に見せかけて殺害方法を示す伏線だった(APTX4869を飲ませるために使われた)

など、幅広い解釈もできそうですね。まあ、③の可能性は極めて低いですが、一例として。

 

4. メアリーはコナンの実力を試している?

コナン「オレを試しているのか? 協力者として信用のおける有能な人間かどうかを…」
(名探偵コナン1038話より引用)

「領域外の妹」の意味にたどり着いたコナンは、メアリーの狙いを「協力者として有能か試している」と推理しました。

これは基本的には合っていると思います。実際にメアリーは一度、コナンをホテルに呼び出して会話を試みていますからね。

 

メアリー「こちらの期待に値しない輩だったら…早々にここを立ち去り…新たな根城を探させばならんのだからな…」
(名探偵コナン83巻より引用)

▲メアリーは過去にもこのように発言。「期待に値しなかったら根城を変える」ということは、言い換えると「期待に値したら協力者として迎え入れる」ということ。

また、メアリーと繋がっている可能性のある若狭も、再三にわたってコナンの実力を試すような行動を見せています。こうした行動の一致も、コナンの推理を裏づけるポイントです。

 

 

5. メアリーがコナンを疑う理由

一方で、メアリーのコナンに対する評価軸は「有能かどうか」だけではなさそう。

なぜならメアリーは世良に対して「江戸川コナンに気を許すな」と命じており、コナンを信用していません。さらに10年前のコナンと比べて「まるで別人なのだから」と話していることから、コナンの実力ではなく人格に疑問を抱いていることが伺えます。

 

メアリー「それより荷造りをしろ! 根城を変える…」
(名探偵コナン90巻より引用)

▲事実、メアリーは霊魂探偵の事件でコナンと接触したあと、すぐに拠点を移しています。これは現場が隣室だったのが理由ですが、先ほどの「期待に値しない輩だったら新たな根城を探す」という言い回しとダブっているため、コナンから逃れる意図もありそう。

 

メアリーはなぜ、コナンを信用しないのか。その理由は、霊魂探偵の事件で蝶ネクタイ型変声機の存在を知ったことかもしれません。

これはあくまでも仮説ですが、メアリーはイギリスで務武に会いにいったとき、あらかじめ電話や動画などで務武の声を聞いていたのではないでしょうか。

 

メアリー「あんな簡単な操作で色々な人物の声が自在に出せるとは…様々な場面での使用が想像できて…心が躍るな…」
(名探偵コナン90巻より引用)

▲だとすれば、「様々な場面での使用を想像できる」というセリフは、務武の声を再現した場面のことを指している。さらに「心が躍る」のも、自分を罠にかけたトリックを見抜けたかもしれないから。

そして、そのトリックを実行できる蝶ネクタイ型変声機を持っているのがコナン。メアリーがコナンを警戒するのも頷けます。

 

まあ、メアリーが蝶ネクタイ型変声機の存在を知っていることは、どちらかというと沖矢の正体を見破る伏線のようにも思えますが。沖矢がメアリーと対面したら、秒で正体がバレそう(笑)。

 




6. 世良は沖矢の正体に気づく

また、今回もうひとつ見逃せないのが、ラストの世良が沖矢の正体に勘づいたシーン。

 

似たシーンはジョディにもありましたが、あれはバーボン編で沖矢の正体を匂わせるための描写でした。今回の描写は別の役割を持っているはずで、それはおそらく沖矢の正体バレに向けた布石。

「隠そうとすればするほど、かえって人に知られてしまうもの」という今回のセリフは、沖矢の未来を示してるとも考えられます。

 

世良の「まさかね…」の表情も印象的。作り笑いをしながらも眉根は下がっているという、複雑な表情をしていますね。

これはおそらく「生きていると信じたいけれど、そんなわけない」という葛藤の表れだと思います。

その背景にあるのは、務武に会えると期待して叶わなかったイギリスでの経験。世良は期待することに対するある種のトラウマを抱えているのかもしれません。

 

今回の事件はラム編の暗示だったのか?

さて、3つの堆黒盆のうち2つが贋作という今回の事件(実際には習作でしたが)。初回の考察で「ラム編の暗示になっているのでは?」と推測しましたが、その結果はどうだったのでしょうか。

結論から言うと、今回の事件がラム編を暗示している可能性はゼロではないと思います。これまでも気になったポイントはいくつか指摘しましたが、最終的に本物の盆の持ち主が蝶野さんだったのは引っかかりますね。

 

今回の事件の容疑者は、「女性」「大男」「老人」というラムの3つの特徴と一致しています。さらにこれらの特徴は、ラム候補者である若狭・黒田・脇田の3人にも該当します。

まあ、脇田の年齢は正直なところ老人とは呼べませんが、コナンの世界では阿笠博士も年齢以上の容姿ですし、若狭と黒田は明らかにラムの特徴を意識して作られています。そもそも中年と老人の境界線も曖昧なので、青山先生のなかで脇田=老人として設定されている可能性はありそう。

だとすれば、蝶野さんは脇田のポジションに配置されたキャラクター。本物の盆の持ち主だったことは、ラム=脇田を暗示しているとも考えられます。

 

とはいえ、ラムの特徴は正確には「女のような男」「屈強な大男」「年老いた老人」なので、今回の容疑者と完全に一致しているとは言いがたい部分もありますね。

いずれにせよ、現時点でラムの可能性が高いのは脇田だとは思います。さらに言えば、脇田兼則と名乗っている人物の正体も目星はついているので、当たっているかはわかりませんが、またコンテンツにしたいと思います。

 

Twitterでもショートな考察を更新中。








5 件のコメント

  • ラムの特徴の三つのうち二つは羽田浩司の遺体の不自然さから出た噂じゃないかな?
    男性と女性では殺害方法が違う傾向があるという研究もあるとか。
    羽田浩司はまるで大男に暴行されたような遺体だが実際は非力な女性に毒を盛られたような服毒死。
    羽田浩司の遺体から男女の殺害方法を併せ持った二面性を感じるんだよね。

    私は脇田は景光の育ての親で時は金なりのアナグラムはラムを誘き出すために作った名前だと思う。
    スコッチの事をバーボン編ではなくわざわざラム編でやるのは景光の死にラムも関わってると思うんだよね。だとすると脇田は景光が命と引き換えに守ったもう1人の家族の「東京の親戚」という見方もあると思うな(笑)

    • コメントありがとうございます。すべて返し切れてなくてすみません。。笑

      羽田浩司の殺し方が「大男」「女性」を連想させるという視点はありませんでした!以前、ラムは剣術の使い手という仮説を立て、その根拠の一つに「老人(=杖と剣の類似)」を挙げましたが、確かにラムの行動や特技が3つの特徴と連動してる可能性はありそうですね。

      • FBIのアカデミーでも犯罪心理学を基に人物像をプロファイリングする訓練をするので私の仮説が正しければ赤井のFBIとしての真の力がラムの正体を突き止めるのに発揮されるかも(笑)

        安室と赤井の決定的な違いは諜報と捜査で専門性が違うこと。
        実はFBI捜査官としての赤井秀一の真の力はまだ発揮されてないと思うんだよね。

        年老いた老人=No.2という立場。
        じゃないかと私は思うな。

        「No.2って言うぐらいだから実はピスコ以上の高齢なのでは?」という組織内での噂とか(笑)

  • 初めまして。
    いつも大変楽しく拝見しています。
    とても詳しく考察されてて、普通にコナンを読んでるだけだとサッと流してしまう伏線も、コチラのブログのおかげで「そうなのか!」と教えられています(笑)

    ところで、今回の投稿で、「ジンと務武の関係」のところを拝見してて、ふと思いついたのですが、ジンは常々「殺した相手のことは忘れる」と言っています。
    もしかすると、務武を殺したのはジンで(若しくは実は務武は生き延びているけれども殺したと勘違いしている)、その時の方法や状況が、流石のジンにも深く心に残るモノで、そのせいで「人を殺したら相手のことは忘れようとする」と努めているのでは……と思ったのです。
    Hiroさんが「務武とジンが上下関係にあったかも」と考察されていて、ふと思いつきました。
    この2人の間に何かしらの「物語」があって(赤井秀一と安室透みたいな)、それがジンの哲学に影響しているのでは…と。
    それに、ジンは赤井秀一が務武の息子であることにピンと来てないみたいですが、「コナン」では烏丸や安室透のように名前を複数持っているキャラは珍しく無いので、務武も別の名前を持っていたのかもしれません。
    何にせよジンのあの冷酷で頭の良いキャラは「黒の組織」の中でも特異なので、彼にもそれなりの物語があるのかもしれません。

    そんなことを、ちょっと妄想しました(考察ほどキチンとしてませんが(笑))。
    長々とすみませんでした。
    今後も楽しみにしています!

    • お返事めちゃくちゃ遅くなって申し訳ございません!いつもご覧くださってありがとうございます。

      ジンが務武を殺したのかはわかりませんが、ジンが「殺した相手の名前を忘れることにしてる」のはエピソードがあるかもしれませんね。個人的には、殺した相手のことを忘れるのは殺人への躊躇いが生まれづらくなるため、殺し屋として合理的=組織への忠誠心の表れかなと思ってました。

      ただ、コナンのラスボスは「あの方」「ジン」のどちらかになると思うので、より深い理由があってもおかしくないです。その辺りのこともまた記事にできたらと思います!

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    ABOUTこの記事をかいた人

    子供の頃にベルモットの変装トリックに騙されて以来、生粋のコナンファン。考察は「DEATH NOTE」などにも似た頭脳エンタメだと思います。読み物として面白くなるように「わかりやすさ」と「サプライズ」を大切にしています。本業も物書き。