名探偵コナン警察学校編 第1話 感想&考察。ゼロとヒロの絆と、松田陣平の過去【サンデー感想】

名探偵コナン警察学校編 CASE.1「龍虎相博」の感想&考察です。

ついに待望の警察学校編がスタートしました。先週の予告で「5人がそれぞれの正義のために駆け抜けた、知られざる過去の物語」とありましたが、その正義にフォーカスした物語になりそう。

 

今回は、

  • 降谷はエレーナの調査のために警察官を目指した?
  • ゼロとヒロの絆の深さ
  • 松田と警察の因縁
  • 萩原は「安室透」の原型になっている?

など、5人の正義や過去、それぞれの人物像などを考察します。

 

ネタバレ注意です! 

 

1. 降谷零

まずは、警察学校編の主人公である降谷零から見ていきましょう。

 

降谷零の正義

降谷の正義のヒントになるのは、冒頭のこのセリフ。

降谷「僕は絶対に警察官にならなきゃいけないんだ…邪魔をしないでくれ」
(名探偵コナン警察学校編 CASE.1より引用)

使命感を感じさせる言い回しや、オールAの成績を叩き出すほどに努力していることから、明確な目的のもとに警察官を目指しているのが伺えますね。

降谷にとって警察官になるのはゴールではなく、目的を果たすためのスタートラインという雰囲気。

 

真っ先に思いつく目的は、宮野エレーナの死の調査でしょうか。

景光「僕や兄さんみたいに警察官を目指してるんだってさ!」
(名探偵コナン1030話より引用)

高明の回想シーンによると、降谷は中高生の時点で警察官を目指しています。となると、警察官になる動機は、中高生になるまでのどこかのタイミングで発生している。

そして、少年時代の降谷と犯罪の接点は、現時点ではエレーナのみ。

補足:もう一つ、景光の両親の事件もありますが、上記のセリフからして降谷と景光の動機は別なので、ここでは省きます。 

 

宮野夫妻の死が、世間的にどう処理されたのかはわかりませんが、研究所の火災そのものを隠蔽するのは困難。実際に灰原やピスコのときも、研究所の火災はニュースになったり、警察に把握されていたりします。

となると、宮野夫妻の事故死は報道されている可能性もある。降谷はそれを知り、真相を追うことを決意したのかもしれません。

 

ただ、宮野厚司に事務所を借りていた出島社長は宮野夫妻の死を知らなかったので、どちらとも断言はできませんね。

降谷は組織に入ってからエレーナの死を知った、という可能性も十分に考えられます。

 

また、降谷の持つエレーナの記憶は、どこか断片的にも見えます。

安室「何故今…あの女性のことを…?」
(名探偵コナン95巻より引用)

特定の言葉やシチュエーションをスイッチに、思い出がフラッシュバックすることが多いんですよね。そのため、降谷がエレーナの死を追い続けているとは考えにくい部分も。

 

一方で、警察官になった降谷がエレーナの死を放置するとは思えないのも確か。

仮に警察官になった動機がエレーナとは無関係だったとしても、結果的に調査することになるなら、最初から追っていたことにしたほうがスマートです。

それに降谷は、ミストレ編で灰原を見て「ヘル・エンジェルとよく似ている」と言ったり、ゼロの日常でもエレーナとの思い出を回想したりしています。これらの描写を踏まえると、降谷の記憶はしっかりと残っているようにも感じられます。

 

総合すると、降谷の目的がエレーナの死の調査という可能性はありそう。余談ですが、個人的に宮野夫妻の死については結論が出ているので、それもまた近々。

 

出生の秘密と繋がる可能性

また、警察官になる目的が、降谷の出生と関わっているパターンもあると思います。

 

よく指摘される通り、降谷の関わる事件はDNAや血液に関係するものが多いです。

2017年の話そうDAYでは、降谷の血縁関係について聞かれた青山先生が「あまり言えない」とも答えています。この辺りの複雑な事情が、降谷を警察官へと駆り立てているとか。

実際に警察学校編では、登場人物の家族にスポットが当たっています。景光は「亡くなった両親」、松田は「ボクサーの父親」、伊達は「辞職した父親」と、今回だけでも3組。

 

原作やゼロの執行人を見る限り、降谷の目的は愛国心と結びついている可能性も。

安室「僕の恋人は…この国さ」
(名探偵コナン「ゼロの執行人」より引用)

警察学校編は、降谷の「愛国心の原点」を明かすシリーズになるかもしれません。

 

降谷零の人物像

あとは、降谷の本来の性格も徐々に見えてきましたね。

これまでの降谷を見ると、明美に「離せよ」と言っている幼少期、高明に対して無表情な思春期、松田とドンパチしていた様子の青年期と、少しヤンチャな印象でした。

ですが、実際には「真面目すぎる性格」で、そのせいで周囲と衝突している様子。

 

そう考えると、風見と接する「公安の降谷零」は素顔に近いかも。弱みを見せられないというフィルターはありますが。

加えて、赤井に使っていた「何をバカな…」というセリフを今回も使っていたので、赤井の前でも素ではありそう。

 

一方で、相手に合わせて対応を変える「安室透」のような器用さは、この頃は備わっていないように見えます。むしろその資質は、萩原や伊達のほうが感じるくらい。

もしかしたら警察学校編は、降谷零が「安室透」に必要なパーツを集めていく物語なのかもしれませんね。

 




2. 諸伏景光

続いては、衝撃の過去を明かされた諸伏景光について。

 

諸伏景光の正義

景光の両親の死は、事故ではなく事件でした。そこまでは想像している人も多かったと思いますが、まさか目の前で両親を殺されていたとは……。

東京の親戚に引き取られたのも、トラウマの現場から遠ざけて心を癒すためかなと。だとすると、電話で「東京で友達ができた」と言われたときの高明は、本当にホッとしたと思います。

補足:本来なら兄弟ともに引き取られるところを、高明だけが長野県に断固として残ったという可能性もあります。 

 

警察官を目指しているのは、やはり事件が未解決だからでしょうか。

その場合、東都大学の首席である高明がキャリア試験を受けなかったのも、両親の仇を追うためということになりそう。ただ、景光は長野県警ではなく公安に配属されているので、警察学校編の間に事件は解決するのかも。

もちろん、両親の事件は幼少期に解決済みの可能性もあります。その場合、景光は自分のように苦しむ被害者を一人でも減らすべく、警察官を目指している設定かなと。

 

今回の話を見てからだと、裏切りシリーズの解釈も少し変わりますね。

赤井「家族や仲間の連絡先が入っていたであろう…この携帯を…」
(名探偵コナン90巻より引用)

景光はもう誰も失いたくなくて、命と引き換えに仲間や家族を守ろうとしたんだなと。無力な自分に後悔したくなかったんだなと。だからこそ、生き延びる可能性の高かった状況で、確実に大切な人を守るために、瞬時に命を差し出すことができてしまった。

 

ただ、景光は決してトラウマに突き動かされたわけではないと思います。なぜなら警察学校編で、景光はトラウマを克服するはずだから。

屋上での決断は、トラウマと向き合った先で見つけた信念によるものではないでしょうか。

 

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2019年2月25日

 

諸伏景光と降谷零の関係

景光と降谷の関係についても見ていきましょう。

 

まず、この頃も呼び名は「ゼロ」と「ヒロ」でしたね。ですが、景光は裏切りシリーズで降谷のことを一度「降谷」と呼んでいます。

景光「悪い降谷…奴らに俺が公安だとバレた…」
(名探偵コナン90巻より引用)

おそらく公安のゼロだと疑われないために、公安に配属されたタイミングで呼び名を「降谷」に変えたのではないでしょうか。

 

さらに世良の4年前の回想シーンで、降谷は赤井のいないときにも景光を「スコッチ」と呼んでいます。組織に潜入してからは万一に備えて、常に「バーボン」「スコッチ」と呼び合っていたのかもしれません。

だとしたら、警察学校編は2人が「ゼロ」と「ヒロ」でいられた最後の時間だったとも考えられますね。

補足:世良の前で「ヒロ」と呼ばなかったのは、赤井にそれが伝わるのを嫌っただけの可能性も。 

 

景光と降谷の絆の深さ

また、景光の過去が明かされたことによって、景光と降谷の絆の深さも見えてきました。

 

ハーフの降谷と、心に傷を負った景光。2人の関係は、どちらも学校に馴染めないことから始まったのかもしれません。その後は「身近な人の死」や「未解決の事件を追っている」という共通点が、友情をより強固にしたのだと思います。

絶望に放り込まれた景光にとって、降谷の存在は最初の光だったのではないでしょうか。過酷すぎるトラウマを背負い、一人ではとても抱え切れなくなっていたとき、自分と近しい境遇の少年に出会ったのですから。それは降谷にとっても同じ。

 

リアルな話をすると、幼少期の凄惨な経験って、少し特殊なものだと思います。周囲が未来に向かっている中、自分だけが結論の出た人生を歩いている感覚。残酷な死を知った子供は、命の呆気ないほどの脆さに、夢を見られなくなることもあります。

降谷と出会わなければ、景光の人生はそういうものになっていたかもしれません。

2人の関係は、親友であり、恩人であり、奇跡でもあった。いわば、“世界に奇跡は存在する”と証明してくれる希望そのものになっていたのかなと思います。

 

景光「で?その相手とは仲良くやっていけそうか?」
(名探偵コナン警察学校編 CASE.1より引用)

このセリフは、エレーナの「ケンカの相手と仲直りするための名誉の負傷なら、絆創膏くらい貼ってあげるわよ?」というセリフを彷彿させます。降谷はエレーナとの大切な思い出を、景光にも話していたのでしょうね。

 




3. 松田陣平

ここからは、今回のメインキャラクターである松田陣平について考えていきます。

 

松田陣平の正義

さて、どうやら警察を嫌っている様子の松田。その理由はどこにあるのか。

松田「警察学校を卒業した連中が…それをちゃんと実践できてるかどうかはマユツバもんだけどな…」
(名探偵コナン警察学校編 CASE.1より引用)

このセリフから浮かび上がってくるのは、警察に乱暴な捜査を受けた過去。シンプルに考えれば、降谷の話した「目撃情報の注意点」と真逆のことをされた可能性が高そうです。

 

もしこれが「犯罪現場に居合わせたストレスや思い込み」による、松田や身近な人間の証言ミスなら、警察を恨みはしないはず。となると、松田は「警察官の誘導的な質問」によって苦しめられた過去を持っているのだと思います。

パッと思いつくのは、冤罪などでしょうか。警察学校に入学できたということは、少なくとも血縁者が有罪になったわけではなさそうですが。

松田はそんな警察組織を変えたくて、自ら警察官になる道を選んだのかもしれません。だからこそ「警察官を何だと思ってる!?」という叱責に対して、正しく答えられたとか。

 

ちなみにそのシーンですが、「揺れる警視庁」での高木刑事のセリフと繋がっていると思います。

高木刑事「い、いつも佐藤さんが言ってるでしょ…誇りと使命感を持って国家と国民に奉仕し…恐れや憎しみにとらわれずに、いかなる場合も人権を尊重して公正に警察職務を執行せよって…」
(名探偵コナン37巻より引用)

松田の最期は、誰よりも「誇りと使命感を持って国家と国民に奉仕」するものでした。松田の推理力なら、3秒で暗号を解読できる可能性も視野に入っていたと思いますが、それでも確実に大衆を守る道を選択した。

警察官を嫌っているからこそ、警察官であり続けた。そんな松田の生き様を感じますね。

 

松田陣平の人物像

ヒールで異端児なのは変わりませんが、警察学校時代の松田はよりヤンチャですね。原作の松田はもうちょっとキザで大人な感じ。

差し歯なのも、喧嘩やボクシングで歯を失ったからなのか。ですが、降谷と対等に渡り合うということは、普通の相手に苦戦するとは考えにくい。父親にへし折られたか、まったく別の理由かもしれません。

 

また、鬼塚さん曰く松田は「高いレベルの専門知識を持っていた」とのこと。工学部などの出身でしょうか。

優れた知識を身につけていたということは、松田は以前から爆発物処理班を目指していたとも考えられます。だとすれば、松田の過去は「爆弾」と紐づいている可能性も。まあ、楽しそうな表情でメカを解体しているので、単純に趣味にも見えますが(笑)。

 

4. 伊達航

4人目は、のちに高木刑事とセットで「ワタル・ブラザーズ」と呼ばれる伊達航。

 

伊達航の正義

鬼塚「降谷に次いで総合力No.2、リーダーシップがある伊達も…警察官だった父親の辞職を引きずっていて…」
(名探偵コナン警察学校編 CASE.1より引用)

伊達の正義は、警察官だった父親の辞職と関係しているみたいです。

 

「引きずっている」という言い回しからして、伊達にとって父親の辞職は、なんらかの挫折の意味を持っていると思われます。裏を返せば、父親と自己を多少なりとも同一化しているので、それだけ父親を誇りに思っていたということ。

一方で、伊達は降谷というイレギュラーを除けば「最強」だったわけですから、相当の努力を積んでいる。となると、父親の辞職は「優秀な警察官になってやる」という野心へと変換されているように見えます。

 

たとえば、伊達の父親は警察で挫折して辞職。カッコいい刑事として父親を尊敬していた伊達は、それにショックを受けつつも、自分なりに折れない信念を磨き上げようとしている。あるいは、父親の辞職は無念なもので、伊達はその意思を継ごうとしているとか。

うん、ちょっとアバウトすぎますね(笑)。次回以降、また考えてみます。

 

伊達航の人物像

立ち位置としては、グループのよきリーダーですね。言い訳の細かさや、教官に先回りして懲罰を実行する辺り、頭の回転も早くて世渡り上手な印象です。

というか、教官に注意されたらコロッと態度を変えたりと、意外と平気で嘘をつく(笑)。「安室透」の嘘の上手さが、実は伊達を参考にしていたら面白いですね。

 

「今度は俺も混ぜろ」というセリフは、額面通りに受け取ると喧嘩好き。お祭り男なのか、拳を交えてわかり合うみたいな話なのか。

ポジティブに解釈すれば、相手を受け止めるだけの度量の持ち主とも言えるかもしれません。

 

5. 萩原研二

最後に萩原研二について。萩原の正義のヒントは乏しく、現時点では腹の底が見えませんね。

 

松田の差し歯や、父親の職業を知っていることから、松田との付き合いは長そうです。特に差し歯は、出会って間もない関係ではあまり知り得ない情報

これまでは幼馴染かと思っていましたが、仮に松田が工学部の出身で、萩原も爆発物処理班に配属されていることを踏まえると、大学の友人という線もあるかも。

 

それと、萩原の「色男が台無しじゃねぇか」というセリフですが、これは青山先生がコナンカフェのポスターに警察学校組を描いたときのセリフと同じですね。

即興だったそうですが、しっかりと採用されています。

 

また、優れた洞察力とコミュニケーション能力という特徴は、誰かを彷彿させるような。

降谷は松田から爆発物の処理について教わっていますが、洞察力とコミュ力は萩原を参考にしたりしていないでしょうか。4人の残したものが降谷の中で流れている、という展開への布石だったら嬉しいですね。

 

長くなりましたが、それくらい濃密で考察するポイントの多い警察学校編。夢のような企画だと思いますし、青山先生や新井先生、関係者の皆さまに感謝です!

 

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5 件のコメント

  • 松田が警察が嫌いな理由は父親が警察に理不尽な理由で拘束されたとか?
    プロボクサーなら医療目的で眼帯する事よくあると思うんだよね・・。
    裏取りすれば義眼ではないと分かるのに眼帯をしてるというだけで義眼と断定され公安警察に拘束されたとか?
    まあゼロは秘密裏に捜査してて警察官として裏取りなんてできないみたいだけど・・。

    • どうですかね〜。。個人的には松田の過去とラムとか公安とかは別件かなと。

      眼帯してるだけで公安に拘束されることはなさそうですが、ラムがボクサーなら可能性はゼロじゃないかもしれませんね。その場合、脇田が丹下段平をモデルにしてるのと繋がるんですが…まあ、ないと思います笑

      • 公安の案件は諸伏家の事件のほうかもねー。

        脇田兼則のモデルが丹下段平なら景光の死にかかわってきそうだけどね。
        青山先生が景光の最期をわざわざ「屋上」にした理由に・・。

  • たった一話からここまでの考察ができるなんて、、、感服するばかりです!
    伊達、萩原、諸伏、松田の存在が今の降谷零にどう繋がっているのか、警察学校編の重要なテーマですね。

    • ありがとうございます!

      そうですね〜。本編なら小出しにされるような情報が1話にギュッと詰まってる感じですし、次回以降も楽しみです!

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    子供の頃にベルモットの変装トリックに騙されて以来、生粋のコナンファン。考察は「DEATH NOTE」などにも似た頭脳エンタメだと思います。読み物として面白くなるように「わかりやすさ」と「サプライズ」を大切にしています。本業も物書き。