トリプルフェイスを持つ男、安室透。
私立探偵「安室透」であり、黒の組織の「バーボン」であり、公安警察「降谷零」でもある。
複数の“仮面”を使い分ける彼の本質はどこにあるのか?
そんな特集「トリプルフェイスの素顔」第3回では、安室透のバーボンとしての姿を徹底考察。
ベルモットやラム、烏丸蓮耶との関係性を探りながら、安室がいかにしてコードネーム「バーボン」へと成り上がったのかも紐解きます。
バーボンの組織内での立場
最初のテーマは「バーボンの組織内での立場」。安室は一体、周囲からどんな評価を受けているのでしょうか。
1. 暗殺もこなす「探り屋」
水無怜奈「組織の新しいメンバーが動き出した!情報収集及び観察力・洞察力に恐ろしく長けた探り屋で、コードネームは…」
(名探偵コナン60巻より引用)
ご存知の通り、バーボンは探り屋として名を馳せています。となると、組織内での主な任務は、「裏切り者の追跡」や「敵対組織の調査」でしょうか。
赤井と水無伶奈にも言えることですが、コードネームを持つほど成り上がるためには、組織に多くの利益を還元しなければなりません。つまり、犯罪の片棒を担ぐのは必須。
問題は、どんな手段で犯罪を手助けしたのか。あくまで「探り屋」なら、殺人に手を染めるような真似はしていない気も。
ベルモット「でもね…殺るのは私じゃなくバーボン…彼女だけはこの世にいてはならないのよ…」
(名探偵コナン78巻より引用)
とはいえ、ベルモットはバーボンに灰原の抹殺を任せています。
ベルツリー急行での暗殺は、段取りから実行までかなり複雑。一度も殺人を犯したことのない人物には任せられない作戦です。ましてやベルモットにとって灰原は、コナンとの約束を破ってでも殺したい相手。
つまり、ベルモットはバーボンに高い暗殺能力があると考えています。
ジン「確かなんだろーな?ベルモット!」ベルモット「ええ…貨物車ごと吹っ飛ぶ所をバーボンが見てたらしいから…」
(名探偵コナン78巻より引用)
ベルモットはジンに灰原の抹殺を報告。直後に灰原がキッドによる変装だったと発覚しても、それを訂正していません。
この嘘をつけるのは、灰原が再び幼児化し、ジンには見つけられない姿になったからこそ。
もしかしたら安室も、同じような手口で「殺したフリ」をしてきたのかもしれません。
暗殺対象と交渉し、公安に引き渡してしまえば、組織がその人物を見つけることは困難。こうして死の偽装を繰り返すことで、暗殺の実績を積み上げ、組織内での地位を確立していったとか。
だとすると、安室には並外れた情報収集能力があるため、次々と裏切り者を見つけては殺したフリをする、なんて荒業もできますね。
2. 赤井秀一のライバル
灰原「お姉ちゃんの恋人の諸星大とライバル関係にあった組織の一員…お姉ちゃんの話だと、お互い毛嫌いしてたらしいけど…」
(名探偵コナン78巻より引用)
バーボンは組織内で赤井のライバルと目されていました。赤井はのちにあの方が「銀の弾丸」と恐れるほどの評価を得ているため、それと肩を並べるバーボンの評価も高そう。
ただし、ジンは「我々を一撃で壊滅させられる銀の弾丸は存在しない」と話しており、赤井の能力を認めながらも「銀の弾丸」にはなり得ないと考えています。
これは、ひとりの個人能力では組織を壊滅させられない、という言い方。つまり、あの方が赤井を恐れるのは能力面だけではない可能性も。
となると、バーボンがもしスパイと発覚しても、赤井ほど恐れられるのかは微妙。個人的には、冷静さと判断力では赤井に分があるものの、能力的には同格かなあと思っているのですが。
ジン「問題の男が赤井だったとしたら…奴はそれ見た事かと鼻で笑う…そんな奴の面は拝みたくねぇからな…」
(名探偵コナン67巻より引用)
また、安室は自信家な性格を組織でも存分に発揮している様子。ジンにも煙たがられています(笑)。
これは「最初は目立たず、徐々に頭角を現す」というやり方をした赤井とは対照的。安室は加入当初から実力を隠さず、次々と任務を果たしていったと想像できます。
3. 秘密主義者
ジン「さぁな…ベルモットと同じく、奴も秘密主義者…どこで何をやっているかわからねぇよ…」
(名探偵コナン67巻より引用)
組織内では「秘密主義者」で通っているバーボン。おそらくは、周囲からの詮索を防ぐために自己ブランディングしているのでしょう。
秘密主義者だから隠し事があるのは当たり前、という周囲の空気を作っているわけですね。ベルモットも同様の手法を使い、「幼児化の存在」や「組織の研究に反対していること」などを隠しています。
しかし、あの方のお気に入りであるベルモットと違い、バーボンには後ろ盾がありません。そのため、秘密主義を貫くのは疑いの目を向けられるリスクも。ラムにスパイと疑われた映画「純黒の悪夢」は、その一例と言えそうですね。
そもそもバーボンは、公安だったスコッチ、FBIだった赤井と一緒に仕事をしていた“スパイ疑惑の筆頭候補”。その疑惑を払拭し、秘密主義者として行動できるほどに信頼されている点からも、安室の立ち回りの巧妙さがわかります。
ベルモットとの「共犯関係」
さて、バーボンの組織内でのポジションは見えてきたので、ここからは各メンバーとの関係性を探っていきます。
一人目はベルモット。複数の秘密を共有し、バーボンとは「共犯者」とも呼ぶべき関係を築いている人物です。
ベルモットの秘密を握っている
安室「なにしろ僕はあなたの秘密を握っている数少ない人物の1人…」
(名探偵コナン86巻より引用)
バーボンはベルモットとあの方の関係をつかみ、それをネタに「また何かあったら力を貸してくださいよ」と脅しています。
最初に脅したタイミングはおそらく、赤井の偽装死の後。火傷赤井に変装するために、ベルモットの持つ変装術と、あの方に作戦を進言できる発言力が必要になったのでしょう。
ただし、ベルモットの秘密を知ったのはもっと以前。赤井の死を受けてからベルモットを探ったとしたら、秘密にたどり着くのが早すぎますからね。
安室の公安としての目的は、組織を内部から調査すること。そして、個人としての目的は、初恋の女性である宮野エレーナの死の真相を暴くこと。安室はどちらかの切り口から、すでにベルモットの秘密へとたどり着いていたのでしょう。
詳しい秘密の内容については、また別記事にて考察しますね。
バーボンとベルモットは“似た者同士”?
しかし、「脅す側」と「脅される側」にしては、両者の関係性は良好。これについては、3つの理由があると思います。
- 灰原の抹殺(身柄の確保)という目的の一致
- 組織内での立場がベルモット≧バーボンであること
- バーボンとベルモットが“似た者同士”であること
人の心理を操る技術
蘭(ベルモット)「ねぇコナン君?梓さんの苗字ってなんだっけ?」
(名探偵コナン90巻より引用)
裏切りシリーズでベルモットは梓に変装。梓の苗字がわからなかったところを、蘭の声を出すことでコナンから鮮やかに聞き出します。
人の心理の死角を突くのはバーボンの専売特許ですが、ベルモットの得意分野でもある。二元ミステリー編でもジョディに変装し、待ち伏せていたFBIを撤収させています。
ほかにも、ニューヨーク編ではローズの殺人を察知したり、赤井の「まさかここまでとはな」というセリフを嘘ではないと見抜いたり、人の心理への敏感さはピカイチ。女優として磨かれたスキルなのでしょうね。
バーボンとは同じ手法を使うもの同士、仕事がしやすいんじゃないかなと。
お互いに秘密主義者
また、バーボンとベルモットは共に秘密主義者。じつは秘密主義者同士って、コミュニケーションを取りやすいんですよね。
なぜなら、お互いに詮索される心配がないから。相手を詮索するなら自分の秘密も明かさないとアンフェアになってしまうため、少なくとも言葉上での探り合いは避けるもの。
ベルモット「そーいえばその盗聴器、時々ノイズが入って聞き取りづらかったけど…」安室「ああ…何か調子が悪かったようで…」
(名探偵コナン85巻より引用)
ベルモットへと繋がっている盗聴器にノイズを入れ、秘密を隠すバーボン。
同じようにベルモットも「幼児化の存在」や「組織の研究に反対していること」などを伏せ、“近からず遠からず”の距離感を保っています。
コナンと蘭を守る「約束」
ベルモット「私との約束を守ってくれるかどうかがね…」安室「ああ…何があってもあの2人に危害は加えないっていうアレですね?」
(名探偵コナン90巻より引用)
ベルモットはバーボンに対し、コナンと蘭に危害を加えないと約束させています。
確かにベルモットからすると、バーボンは純粋な組織の幹部。残忍な行動を取る可能性もあるので、こうした約束が必要なのは理解できます。逆に言うと、ベルモットはバーボンをスパイだと気づいていないのは確定。
しかし、この約束はベルモットにとってだいぶリスキー。
二人との関係を疑われるのはもちろん、コナンがただの天才少年ではないと明かしているようなものなので、そこから「コナン=工藤新一」と突き止められる危険性も。
ベルモットからすると望ましくない状況ですが、それでも約束したのには理由があります。
安室「恐ろしい男ですよ…あの少年は…」
(名探偵コナン81巻より引用)
バーボンはコナンを「恐ろしい男」としてベルモットに話しています。つまり、コナンが「眠りの小五郎」を操っていることは共有済み。
にも関わらず、ベルモットがバーボンを阻止する素振りはありません。秘密を握られているため、迂闊な真似ができないのでしょう。
おそらくベルモットは、こうなるのを見越して約束を取り付けたのではないでしょうか。
バーボンから毛利小五郎を調査したいと言われた時点で、「眠りの小五郎」のトリックを見破られるのは覚悟しなければなりません。そうなった場合、なんとしても守りたいのは「宝物」であるコナンと蘭の安全。ベルモットはそこまで予想し、先手を打ったということ。
こう考えると、ベルモットもやはり切れ者。安室とまともに駆け引きできるキャラクターは、作中でもごくわずかでは。
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初めまして。
水無怜奈が「組織の新しいメンバーが動き出した!」と言ってるシーンがありましたが、スコッチが殺された時には安室さんってコードネームもらっていましたよね?(赤井さんがそう呼んでるシーンはなかったですけど、ミステリートレインよりも前から安室=バーボンって気づいていたから)
楠田陸道の回でベルモットは成果をあげた人にしかコードネームをつけないみたいなことを言っていましたしたし、水無怜奈も別に新米っていうわけでもないのでバーボンの存在を知っていると思うのですが。。。
Hiroさんは水無怜奈の発言をどうとらえてますか?
初めまして!コメントありがとうございます。
このセリフですが、確かに額面通りに受け取るとキールが「バーボン=新メンバー」と認識してるように聞こえますが、単に「バーボンというメンバーが新たに動き出した」って意味で使っただけかな〜と思います。
ご指摘の通り、組織でコードネームを得るにはある程度の手柄を立てないとダメっぽいので、コードネーム持ちの時点で新メンバーということはあり得ません。その仕組みはキールも知ってるはずなので、キールが誤解してたと考えるよりは、言葉のあや的な感じで受け取った方が良さそうです。